既製杭の品質判定技術でライセンス契約を3社と締結、清水建設:産業動向
清水建設は2018年6月、既製杭先端部と地盤の支持層を一体化するソイルセメントの強度を化学的手法で判定する技術「CW-QUIC」を開発した。同技術は300現場で採用された実績があり、このほど、同技術のライセンスを供与する実施許諾契約を三谷セキサンやジャパンパイル、東京ソイルリサーチと締結した。
清水建設は2020年6月10日、既製コンクリート杭(既製杭)品質の判定技術「CW-QUIC」について、国内の主要な既製杭施工会社である三谷セキサンとジャパンパイル、地盤調査会社の東京ソイルリサーチにライセンスを供与する実施許諾契約を締結したことを発表した。
一般的に既製杭の施工は、杭孔の掘削や杭先端部を支持層に固定するためのセメントミルク注入、泥水との攪拌、杭の挿入という手順で進む。日本建設業連合会の既製杭施工管理指針では、セメントミルクと泥水を攪拌(かくはん)して構築する「根固め部」と呼ばれるソイルセメントの強度確認が推奨事項になっている。
そこで、現場では、試験杭施工時に未固結のソイルセメントを根固め部から採取して、圧縮試験用のテストピースを製作し、検査機関に依頼して所定の強度が発現することを調査している。チェック期間は最長7日かかることから、現場で即座に強度確認できる検査手法が求められていたため、清水建設はCW-QUICを開発した。
CW-QUICは、既製杭先端部と地盤の支持層を一体化するソイルセメントの強度を化学的手法で判定する。2018年6月の開発以降、300現場で採用された実績があり、所定の検査キットを用いて手軽に検査でき、かつ1時間程度で判定可能なことが現場で評価され、今回の実施許諾契約に至った。
CW-QUICの特徴は、ソイルセメントの強度判定に化学的手法を用いることだ。ソイルセメントはコンクリートと同じように、セメントと水の混合比率と最も相関があることを踏まえ、CW-QUICでは、セメントがアルカリ性を示すことを活用して、アルカリと酸の中和反応を利用し、所定量のソイルセメントが含有するアルカリ成分を中和させる酸の量によって強度を推定する。
同技術は、日本建築センターから、信頼性を証する建設技術審査証明を取得。また、日本建築学会の2020年度日本建築学会賞(技術)も受賞している。
実施許諾契約を締結した三谷セキサンとジャパンパイルだけでも、毎年1200件程度の現場で既製杭を施工していることから、今後、CW-QUICの採用件数が伸びることが期待されている。
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