2021年度の“国交省概算要求”から見る建設市場の見通し、ヒューマンタッチ総研:産業動向
ヒューマンタッチ総研は、2021年度の国土交通省予算概算要求から見る建設市場動向をまとめた。
ヒューマンタッチが運営するヒューマンタッチ総研は2020年10月29日、2021年度の国土交通省予算概算要求から見る建設市場の動向をリリースした。
■2021年度の概算要求額は前年度予算と同額
2021年度の予算概算要求における公共事業関係費の要求額は、前年度予算と同額の5兆2579億円となっている。これは、「2021(令和3)年度予算概算要求の具体的な方針について」で、概算要求での要求額は基本的に前年度同額とし、その上で緊要な経費については、別途、所要の要望を行う方針が示されたからであり、国交省の公共事業関係費の実質的な予算の増減を分析するためには、「緊要な経費」に係る主な要望内容を見ることが必要になる。
■防災・減災、国土強靭化及びインフラ老朽化対策に前年度を上回る予算を要望
公共事業に関連する「緊要な経費」に係る要望内容として、「激甚化・頻発化する自然災害等に鑑(かんが)み、3カ年緊急対策として講じられてきたこれまでの実績を踏まえ、今後中長期的に達成すべき安全度の水準を見据えて、これまでの実績を上回る必要かつ十分な規模となるよう、予算編成過程で検討する」と、防災・減災、国土強靭化などに向けて前年度を上回る予算を確保するとしている。
具体的な内容を見ると、あらゆる関係者により流域全体で行う「“流域治水”への転換」に5027億円(前年度予算比104%)+α、「集中豪雨や火山噴火などに対応した総合的な土砂災害対策の推進」に1155億円(同101%)+α、「南海トラフ巨大地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策などの推進」に1646億円(同112%)+α、「密集市街地対策や住宅・建築物の耐震化の促進」に548億円(同109%)+α、「地域における総合的な防災・減災対策などに対する集中的支援」に7847億円(同100%)+αとなっており、防災・減災や国土強靭化への取り組みに前年度予算+αの要求を予算編成の中で行うことになっている(図表2)。
また、将来を見据えた「インフラ老朽化対策の推進」には7176億円(同103%)+αが要求されており、道路、橋梁(きょうりょう)、トンネルなどの社会インフラのメンテナンスについても、引き続き予算を確保していく方向性が示されている。
ヒューマンタッチ総研所長の高本和幸氏は、「2021度の予算概算要求では、要求額は前年度予算と同額とするという方針があり、国交省の公共事業関係費の要求額は5兆2579億円で7年ぶりに6兆円割れとなったが、実質的には『緊要な経費』について、予算編成の過程で上積みできる構造となっており、防災・減災、国土強靭化、老朽化した社会インフラ対策については前年度予算+αの要求額としている」と話す。
また、「防災・減災及び老朽化した社会インフラ対策については、国土交通省では喫緊の重要課題と認識されており、毎年のように、数多くの自然災害を受けていることから国民のコンセンサスも取れていると考えられ、最終的には前年度(5兆9369億円)に近い公共工事の予算が確保されるのではと思われる」とコメント。
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