Unityでフル3DCGの“VRマンション内見”、コロナ禍のリモート提案用に積木製作が提供開始:VR
積木製作は、コロナ禍によりマンションの対面での内見が難しくなっている実情を受けて、Unityをエンジンにしたフル3DCGでバーチャルモデルルームを制作し、リモートプレゼンテーションを後押しするサービスを開始した。
建設現場向け安全対策ツールとしてVRのコンテンツ制作を行っている積木製作は2020年9月、新築マンション、戸建て、オフィスといった不動産のリモート営業提案に役立つVRソリューション「VROXバーチャルモデルルーム」を開発した。
3DCGで圧倒的なクオリティを実現
これまでにも3DCGによる不動産VRは存在したが、ハードのスペックが追い付かず、グラフィックの質が低いといった理由で、国内不動産市場でフル3DCGによるVRの導入はまだ限定的なものだった。
しかしコロナショックを受けて、マンションの販売戸数の減少に加え、そもそも販売センターへの集客もままならないという問題が起きており、不動産会社が販売戦略を見直すことは急務となっている。そのような需要の変化に応えるため、積木製作はこれまでのバーチャルモデルルームよりも、高品質なVROXバーチャルモデルルームを提供するに至った。
VROXバーチャルモデルルームは、同社が創業以来、長年培ってきた建築CGパース制作の技術が基礎になっているという。マルチプラットフォーム向け統合開発環境「Unity」を提供しているユニティ・テクノロジーズ・ジャパンと共同して、Unity上で建築ビジュアライゼーションの可能性を建築業界に知ってもらうためのデモコンテンツ制作「Unity Japan Office Project」では、VRで表現可能な品質の限界に挑戦し、ユニティオフィスをリアルに再現した。
この知見を基にサービスを開始したVROXバーチャルモデルルームでは、ウォークスルーをはじめ、リアルタイムレンダリングの最大のメリットを活用し、通常であれば膨大なコストと時間を要する動画制作、パース制作を短時間かつ低コストで提供。VRで1度空間を構築すれば、多くのコンテンツを出力でき、制作費の削減にもつながる。
コンテンツは4Kや8Kの動画出力にも対応し、大画面シアター映像にも耐えるクオリティーで、朝、昼、夜といった時間の移り変わりに合わせて、照明や部屋の明るさも確認できる。正確に太陽の高さを計算し、どれだけ太陽光が射し込むのかなど、より生活に密接した日照や色温度のシミュレーションが行える。
また、建具や壁紙、キッチン面材、フローリングといった内装を瞬時に変えられる。その他、要望により、カスタマイズすることで、マンションだけでなく、オフィスや戸建住宅のVR化にも応じる。
積木製作では、VROXバーチャルモデルルーム導入のメリットについて、遠隔でのプレゼンに用いれば、対面での接客を無くす事で、コロナウイルスの感染を防ぎ、販売センターも設置する必要がなくなり、建設費、維持管理費、人件費など多大なコスト削減がもたらされると訴求する。さらに物件を全てデジタル化することで、内装や家具のレイアウトなどを顧客が納得がいくまで要望を反映できるツールにもなるともしている。
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