“200カ所”の施工現場を遠隔監視するセンターを10事業所に設置、大和ハウスとNEC:現場管理
大和ハウス工業とNECは、現場監督の作業効率を3割向上させることを掲げ、初弾で戸建て住宅を対象に、施工現場をAIを用いて遠隔管理する「スマートコントロールセンター」を全国10カ所に開設する。NECは、2021年度中にも遠隔管理のシステムを汎用化し、建設業界への普及を目指す。
大和ハウス工業とNECは2020年10月1日、施工現場のデジタル化に向けた遠隔管理の実証実験を開始した。
全国10カ所に「スマートコントロールセンター」を設置
背景には、建設業では人手不足の深刻化とともに、高齢化の進行が大きな問題となっていることがある。国土交通省によると、建設業就業者の3割超が55歳以上の一方で、30歳未満は約1割にとどまり、新規の入職者数も減少傾向にある。
また同時に国土交通省では、就労環境改善のため、作業員の4週8休を推進しており、雇用確保の観点からも労働時間の削減は早急に求められている。
そうした状況下にあって、大和ハウス工業とNECは、施工現場の現場監督者や作業員の業務効率・安全性を向上させる目的で、大和ハウス工業の施工管理手法とNECのAIによる映像分析技術を融合させた実証実験を行うこととなった。
実証実験では、大和ハウス工業の本社や東京本社など、全国10カ所の事業所(本社、東京本社、仙台支社、埼玉支社、柏支社、横浜支社、名古屋支社、金沢支社、広島支社、福岡支社)に、戸建住宅の施工現場を遠隔管理できる「スマートコントロールセンター」を設置し、2020年10月から運用を開始する。遠隔管理する対象現場数は、約200カ所。
スマートコントロールセンターは、複数の現場映像や作業員のデータを一元管理できるシステム。施工現場に設置されたカメラやセンサーなどからデータを収集し、センターに配置するモニターを介して遠隔管理する。
各センターでは、常時5カ所の施工現場を対象に、品質管理や安全管理などをリモートで行う。施工現場でも、現場監督者や作業員などの関係者がタブレットやスマートフォンなどから、集約された情報を共有することで、コミュニケーション支援や作業効率の向上につながる。
また、施工現場の映像は、NECのAI技術で分析し、工事の進捗管理や作業員の安全性向上、健康管理に関するデジタル化と有効性の検証も試行する。進捗管理では、掘削やコンクリートの打設など工程の進捗状況をデータベース化することで、工場での部材生産や物流倉庫からの部材輸送といった現場以外での工程を最適化する。
安全面では、作業員や建機、部材などの位置情報もデータベースに集約することで、建機による巻き込み事故や部材の落下事故といった危険を事前に検知し、建設現場で頻発する重篤災害を防ぐ。さらに、NECの「建設現場顔認証forグリーンサイト」ともシステム連携し、作業員の入場実績と体温・血圧などのバイタルデータを組み合わせることで、作業員の健康管理・安全性向上にも取り組むとしている。
今後、大和ハウス工業では、2021年4月以降、遠隔管理の対象を戸建住宅だけでなく、店舗や物流施設などの大型施設の施工現場まで拡大することで、現場監督者の作業効率を3割向上させる。NECは、2021年度中を目標に、施工現場の遠隔管理機能を汎用化し、建設業界へ展開していく。
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