路面異状の記録を効率化する新システムや監視カメラ画像のAI解析による交通量算出:第41回国土幹線道路部会(3/3 ページ)
国土交通省は、高速道路の更新計画や維持管理方法などを議論する場として、社会資本整備審議会 道路分科会 国土幹線道路部会を定期的に開催している。2020年8月21日に開いた第41回の部会では、国土交通省の担当者がITを活用した路面管理の手法を紹介し、また宮城県知事の村井嘉浩氏が、新型コロナウイルスが県内の交通量に与えた影響などに触れ、料金所での接触を減らすETC設備の増設や観光業を支援する道路ネットワークの強化を国に求めた。
県内のETC利用率は86%
宮城県知事の村井氏は、新型コロナウイルス感染症による宮城県内の影響について、「2020年2月29日に県内初の新型コロナ感染者が発生した。同年3月28日〜4月16日にかけて、感染数が増加したが、4月16日に政府が緊急事態宣言を発令したことに伴い、住民の外出自粛が進み、新型コロナの感染者が減少した。しかし、6月19日に政府が全国的な移動を解禁したことで、現在少しずつ、新型コロナの感染者が増えており、第2波の兆候がある」と説明した。
また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、製造業や宿泊業が打撃を受け、地域経済の状況が悪化し、財務省東北財務局が行った2020年4〜6月期の法人企業景気予測によれば、景気判断指数はリーマン・ショック後のマイナス49.2を下回るマイナス55.4となった。交通機関では、宮城県に連絡する高速道路の利用者が減り、全体的に交通量が大幅に減少したが、物流を担う大型車両の交通量は微減にとどまった。
「県内での新型コロナウイルス感染者の増加や地域経済の低迷、交通機関の利用者低減を踏まえ、高速道路施策として、料金所での接触機会の軽減、観光業支援、道路ネットワークの強化を政府に求める」(村井氏)。
料金所での接触機会を減らす方法として、料金所のETC専用化を提案した。県内には、NEXCO東日本と宮崎県道路公社の運営する料金所があり、内訳は、ETC料金所が132カ所で、一般の料金所は64カ所存在し、全体のうちETC利用率は86%を占める。
村井氏は、「14%のETC未利用者が、ETCを車両に搭載しやすいように、ETC車載器の購入費助成支援と一般料金所をETC専用にするためのETCゲート設置やシステム更新へのサポートを政府に要望する。2019年4月27日〜5月6日の期間、宮城県道路公社が管理する鳴瀬奥松島インターチェンジでは、一般料金所のスタッフ6人が、1日1人あたり400台に応対していたことを考えると、従業員の感染リスクは高く、早急な対処が必要だ」と警鐘を鳴らした。
観光業の支援では、宮城県に接続する高規格幹線道路網1万4000キロのうち、未整備エリアとなる約2100キロの整備を提案した。「高規格幹線道路網である三陸沿岸道路の整備率と気仙沼圏域の観光客数推移グラフを見ると、東日本大震災後、急激に落ち込んだ気仙沼圏域の観光客数が、三陸沿岸道路の整備率上昇とともに、回復していくのが分かる。前述したグラフのように、宮城県に連絡する高規格幹線道路網の未整備エリアを減らすことで、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で減少した観光客が増加すると見越している」(村井氏)。
道路ネットワークの強化では、仙台市の北部道路を4車線化を要望した。仙台市の北部道路を4車線化を求める理由には、仙台都市圏高速環状ネットワーク「ぐるっ都・仙台」の機能を高める狙いがある。村井氏は、「ぐるっ都・仙台が2010年に完成して以降、仙台北部地域の製造品出荷額が上がっており、2018年の製造品出荷額は2012年と比較して4倍になった。仙台市の北部道路を4車線化し、ぐるっ都・仙台の機能を拡張することで、さらに仙台北部地域の製造品出荷額は伸長すると想定している」と語った。
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