シールドトンネル工事の人的ミスによるセグメントの入れ替えをゼロにした鹿島の新物流システム:ロジスティクス全国大会 2019(1/3 ページ)
敷地をフル活用した建物の建設現場では、資材などを置く用地がほとんどないため、資材などの搬出入に手間がかかっている。こういった現場では、作業内容に合わせて、材料などを日時指定して搬出入するため、多くの煩雑(はんざつ)な業務が生じている。複雑なワークフローにより、ヒューマンエラーが発生し、工期が遅れることも珍しくないという。鹿島建設はこういった状況を打開するため、新物流システムを構築した。
日本ロジスティクスシステム協会は2019年10月24〜25日、東京都千代田区のベルサール神田で、「ロジスティクス全国大会 2019」を開催した。会期2日日に行われたセミナーのうち、鹿島建設 機械部 専任部長・穴井秀和氏の2019年度ロジスティクス大賞 受賞記念講演「建設業における物流ロジックの適用〜i-ConstructionにおけるSCMの実現〜」を紹介する。
東京外かく環状道路本線トンネル(南行)東名工事で適用
冒頭、穴井氏は建設業の課題について触れた。国土交通省の資料によれば、建設業は他の産業と比較して、29歳以下の就業者数が少なく、55歳以上の割合が多い状況で、高齢化が進行しており、技能者も減少傾向にある。安定した物流システムがないことも大きな問題になっているという。
穴井氏は、「現場によっては、資材などを置くスペースが用意されてないことがある。この場合、作業内容に合わせて日時を指定し、本設構造物材料や仮設材料、使用機械などを適切に搬出入しないといけない。建材や機器の到着が遅れると、工事が進められない」と警鐘を鳴らした。
こういった状況を打破するため、鹿島建設は新物流システムの構築に乗り出した。新システムの概要については、これを適用した東京外かく環状道路本線トンネル(南行)東名工事での利用事例を交えて説明された。
東京外かく環状道路本線トンネル(南行)東名工事は、外径15.8メートル、内径14.5メートル、延長9155メートルに及ぶ国内最大級のシールドトンネルの建設を目的としている。発注者はNEXCO東日本で、施工者は鹿島建設、前田建設工業、鉄建建設、西部建設の特定建設工事共同企業体。工事範囲は東京都世田谷区大倉から東京都武蔵野市吉祥寺南までで、工期は2014年4月10日〜2021年3月18日まで。
工法は泥土圧式シールド工法で、東京都練馬区の大泉立坑から東京都世田谷区の東名立坑までを、双方向からシールドマシンで掘進する高速施工を採用している。シールドマシンは、カッターフェースでトンネルの土を削りながら土砂を搬出し、エレクターでセグメント(トンネルの内壁となるパーツ)を下側から上に向かって組み立てるとともに、シールドジャッキにより前進する。
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