“BIM認証”サービスが本格始動、最古の規格協会BSIがBIM国際動向と認証の意義を説く:BIM(4/4 ページ)
BSIジャパンは、BIM認証に関するサービスを日本国内で本格的に開始した。BIMについての国際的な認証を受けることで、受注競争力を高め、国内外での受注機会を増やすだけでなく、BIMに特化した認定トレーニング制度も用意されているため、人材不足にあえぐ業界で次世代の人材育成にもつなげられるという。
BIM活用で1000億円の工事費削減を達成
土木業の英VolkerFitzpatrickの事例では、BSIのBIM検証(BIMレベル2 設計/建設)を取得し、会社の能力や実力を国内外に示すことで、企業ブランドを広く認知させることができた。結果として、顧客への保証の大きなアドバンテージとなり、政府の公益事業プロジェクトでの受注も増加。同様に顧客がBIM請負業者を指定してくる場合やプロジェクトの初期からBIMのアドバイスを行うことで、受注件数の拡大とサービスの拡張がもたらされた。
3つ目の例は、2020年10月に開催予定だったが新型コロナウイルス感染症の影響で1年間の延期が決まった「Expo 2020 Dubai(2020年ドバイ国際博覧会)」に伴う鉄道拡張工事でのBIM導入。4路線で総延長15キロの鉄道網を敷き、7駅(うち地下駅3つ)を新設する工事で、総工費7000億円が試算されていたが、BIMによって約15%にあたる1000億円のコストダウンが実現した。
アラブ首長国連邦(UAE)の建設業界では、サプライチェーンはさまざまな基準に従って機能することが多く、導入前はBIMが効果的に使えるとは想定していなかった。加えて、BIMはコスト削減になると提案しているが、現実には追加コストと見なされ、採用することにためらいもあった。BIMに対するアプローチの標準化も無く、正しく使えば改善するだろうとは理解していたが、先進国との比較でまだ時期尚早との見方が多数を占めていた。
しかし、BIMにより、以前は数週間かかっていた設計の変更や修正が平均で15%のプロジェクト時間の節約に貢献し、トータルコストも想定以上に抑えられ、BIMの当初イメージが覆されたという。
仁井田氏は最後に、設計の各段階で、従来手法と理想的な設計コストの増減を示した分布曲線グラフのマクレミー曲線を引用して、「2DCADからBIMへと移行するにあたり、2次元の方がコストや労力が少ないと思う方は多いかもしれないが、設計から維持管理までトータルで見れば、大幅なコスト削減が達成できる」とBIM導入の意義を強調して締めくくった。
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