田根剛氏設計の「弘前れんが倉庫美術館」で、日本製鉄の意匠性チタンが屋根材に採用:導入事例
日本製鉄の意匠性チタン「TranTixxii(トランティクシー)」が、青森県弘前市に2020年7月11日にオープンした芸術文化施設「弘前れんが倉庫美術館」の屋根材に採用された。
日本製鉄は2020年08月19日、同社が開発したデザイン性の高いチタン「TranTixxii(トランティクシー)」が青森県弘前市の弘前れんが倉庫美術館に採用されたことを公表した。
屋根の加工及び施工は、地元の勝又金属工業が担当し、施工面積は2982平方メートル、重さにして約4トンで、素材にはTranTixxiiのシードル・ゴールドチタンが使われた。
「記憶の継承」をコンセプトに設計
弘前れんが倉庫美術館は、明治・大正期に建てられた近代産業遺産の吉野町煉瓦(れんが)倉庫を新たに芸術文化創造の拠点として改築した弘前市初の公立美術館。吉野町煉瓦倉庫は、戦時期に日本で最初にシードル(リンゴ発泡酒)を製造開始した工場として知られ、1965年にシードルが製造停止された後も解体されず、市が保存していた。
今回の改修工事での建築設計は、建築家・田根剛氏が代表を務め、エストニア国立博物館などの実績があるAtelier Tsuyoshi Tane Architectsが手掛け、煉瓦倉庫を建てた当時の実業家・福島藤助氏の志を受けて、「記憶の継承」を建築コンセプトに据えてデザイン。老朽化や経年によって傷んだ外壁を修復し、分厚い漆喰で覆われた内壁を剥(は)がして煉瓦に戻し、床は「赤煉瓦」で覆った。屋根は、シードル・ゴールドの菱葺(ひしぶき)屋根とし、光の差し込みによって輝きが移ろう意匠とした。
改修にあたって、元の建物は築100年以上が経過し、老朽化が激しかったため、耐震補強を行うことによる重量増は避けられず、屋根にはより軽量な材料が求められた。
また、雪による腐食を防ぎ、長期にわたって建物を保存できる耐久性をはじめ、チタン特有の干渉色によるシードル・ゴールドの輝き、さらに、TranTixxiiのブランドテーマ「時を超える素材」が、コンセプトである記憶の継承とマッチすることなどから、田根氏が未来への可能性を引き出す素材として、日本製鉄の意匠チタンTranTixxiiを選んだという。
チタンは、軽量・高強度・高耐食という優れた素材特性を有しているため、屋根の軽量化による耐震性向上や腐食の激しい環境下での長寿命化が実現する。とくに日本製鉄のチタンブランドTranTixxiiは、チタン本来の素材特性に加え、チタン表層に存在する酸化被膜による多彩な色彩と独自のテクスチャーで、多彩な表現を可能にする。
倉庫美術館のプロジェクトでは、微妙に色彩の異なるさまざまなパターンのゴールド発色サンプルを試作し、最終的に理想の色彩であるシードル・ゴールドが完成した。加工性を向上させたTranTixxiiは、チタン初加工の勝又金属工業が屋根の施工を行って、美しい屋根を作り上げた。
弘前れんが倉庫美術館のプロジェクトは、スターツコーポレーション、スターツCAM、スターツファシリティーサービス、大林組、NTTファシリティーズ、エヌ・アンド・エー、南建設、西村組が設立した特別目的会社(SPC)「弘前芸術創造」が開発主体となって、吉野町緑地周辺整備のPFI事業として進められた。設計は、建築設計をAtelier Tsuyoshi Tane Archtects、設計統括はNTTファシリティーズとNTTファシリティーズ東北、構造設計は大林組とスターツCAM、設備設計は森村設計、照明設計を岡安泉照明設計事務所が担い、施工はスターツCAM、大林組、南建設、西村組がそれぞれ担当した。完成後の維持管理は、スターツファシリティーサービス、NTTファシリティーズ、NTTファシリティーズ東北、施設の運営はエヌ・アンド・エーがそれぞれ行っていく。
建物の所在地は青森県弘前市吉野町2番地1で、敷地面積は4526.24平方メートルに加え、緑地部分の6226平方メートル。規模は、地上2階建てのミュージアム棟と、2階部分が吹抜けのシードルを販売するカフェ・ショップ棟から成り、合計の延べ床面積は約3,079.53平方メートル。
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