清水建設とボッシュがベルトコンベヤーの故障を防ぐ新システムを開発:製品動向
清水建設と独ボッシュの日本法人は、ベルトコンベヤーの故障予兆を感知するシステムの開発を進めている。
清水建設は、自動車部品大手メーカー独ボッシュの日本法人と共同で、土木工事に用いる長距離ベルトコンベヤーが稼働不良前に見せる予兆を検知する「ベルトコンベヤー監視システム」の実証試験を開始した。
近年、トンネル工事では、環境への配慮で、掘削で発生する排土の搬出に、ダンプなどの大型車両の代わりとして、ベルトコンベヤーを使用するケースが増えている。工期中に稼働し続けるベルトコンベヤーは、故障すると工期遅延などの多大なリスクに直結するため、多くの場合、稼働期間が約2年経過すると、予防措置として故障の有無にかかわらず、ベルトやローラーといった可動部分を一斉交換している。
しかし、一斉交換には多くの費用が掛かるため、不具合の予兆を検知し、適時メンテナンスを行い、故障リスクを回避しつつ運用コストを低減することが業界では求められていた。
今回開発したベルトコンベヤー監視システムは、こうしたニーズをくみ取ったもので、稼働不良の予兆になりうる回転振動の微変調やローラーベアリングの劣化による発熱、ベルト部分の細かな損傷を広範囲にわたり感知する。システムの核は、ボッシュが開発した監視デバイス「TRACI」に連動した加速度と温度の2種類のセンサーや光学スキャンセンサー「LiDAR」。
加速度センサーは、ベルトコンベヤーの振動を常時モニタリングし、通常とは異なる振動の変化から故障を検知。温度センサーは、ローラーベアリングの発熱、光学スキャンセンサーはベルト部分の損傷をそれぞれ感知して状態異常を把握する。
取得した情報は、ゲートウェイを介して、専用クラウドに送信され、データ処理後にスマートフォンのアプリで閲覧できる。システムの開発にあたって、清水建設は不具合の予兆を検知するシステムの発案と性能チェックを担当し、ボッシュはTRACIとLiDARの活用法を検討した。
実証試験では、東京外かく環状道路本線トンネル(南行)大泉南工事作業所に設置している1時間あたり1150トンの排土運搬が可能な約5キロのベルトコンベヤーを使用した。
ベルトコンベヤーに加速度センサーを200個搭載し、直線50メートル部分1カ所と不具合が起こりやすいカーブ50メートル部分2カ所のフレーム部分には、温度センサー400基を配置。さらにベルトコンベヤーの排土搬出入口の両端に光学スキャンセンサーを計8個取り付けた。
今後、両社は、それぞれのセンサーが感知する振動や温度、画像の各データを蓄積し、稼働不良の予兆に関する判定基準を算出する。また、AIの導入も計画しており、正常時から異常時に至るまでデータの変化を抽出し、多様な故障の予兆パターンを学習させていく。
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