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【第7回】「迷走する設備BIMの後れを取り戻せ!」(後編)BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(7)(5/5 ページ)

日本での設備BIMがなかなか進んでゆかない。これは大和ハウス工業も例外ではない。しかし、日本の設備業務は、意匠・構造とは異なる“特殊性”があり、これがBIMに移行しにくい原因とされている。しかし、BIMに移行するためには、設備のBIM化を避けて通ることはできない。どう乗り越えてゆくかが重要な鍵になる。そこで、設備BIMが置かれている現状の課題を分析した上で、設備BIMのあるべき姿を示し、設備がBIMに移行するために何をしなければならないかを、同社技術本部 建設デジタル推進部 次長・伊藤久晴氏が前後編の2回にわたり詳説する。

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迷走する設備BIMの後れを取り戻せ

 結論から言うと、日本の設備BIMが一向に進まないのは、設備自体がBIMに向かないと思い込み、多くの設備担当者が、設備BIMで何をなすべきかという理想を描くことさえできていないためだ。

 「後追いBIMからの脱却」「BIMデータの連携」「維持管理DBとの連携」の3つを実現し、設備BIMが設計・施工での生産性を向上できるツールとして、活用できるように環境を整備しなくてはならない。今回、現時点で最も理想的な設備BIMソフトとしてRevit MEPを挙げたが、既成概念にとらわれず、これから進めるBIMのワークフローの中で、何が最適なのかを再度検討すべきであろう。

 当社も参加した2019年度の「建築確認におけるBIM活用推進協議会」で、設備ソフトとしてRevit MEPを使っていなかったのは当社だけだった。協議会の中で、建設業界でも、BIMを活用する業務では、Revit MEPを使うことにメリットがあると感じ始めていることを実感した。なお、協議会では、確認申請の模擬審査まで行われたので、少なくとも確認申請図が作成できることは実証されている。


2019年度「建築確認におけるBIM活用推進協議会」でのBIMモデル作成ソフト一覧

 既に全社的な移行が進んでいる当社の意匠・構造の部門では、なぜ設備だけがRevitではないのかと首をかしげる者もいた。これまでにRevit MEPの業務標準・教育資料の作成を進め、ようやく2020年度上期から、実施物件での取り組みがスタートしている。

 私自身は設備の設計や施工を経験したことがないので、この内容について意見のある方もおられるだろう。だが、このまま設備BIMが迷走を続け、先に進むことができないとBIM全体の成長は見込めないという危機感から、あえて問題提起をさせていただいた。これを機に、設備部門が迷いを断ち、設備BIMの後れをどう取り戻すのかという議論を、真剣に始めていただくことを望んでいる。

著者Profile

伊藤 久晴/Hisaharu Ito

大和ハウス工業 建設デジタル推進部(旧・BIM推進部) シニアマネージャー(2020年4月1日現在)。2006年にオートデスクのセミナーでRevitの紹介をし、2007年RUG(Revit User Group Japan)の初代会長となって以来、BIMに目覚める。2011年RUG会長を辞して、大和ハウス工業内でBIMの啓蒙・普及に努め、“全社BIM移行”を進めている。「BIMはツールではなく、プロセスであり、建設業界に革命を起こすもの」が持論。

近著に「Autodesk Revit公式トレーニングガイド」(2014/日経BP)。

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