【第7回】「迷走する設備BIMの後れを取り戻せ!」(後編):BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(7)(2/5 ページ)
日本での設備BIMがなかなか進んでゆかない。これは大和ハウス工業も例外ではない。しかし、日本の設備業務は、意匠・構造とは異なる“特殊性”があり、これがBIMに移行しにくい原因とされている。しかし、BIMに移行するためには、設備のBIM化を避けて通ることはできない。どう乗り越えてゆくかが重要な鍵になる。そこで、設備BIMが置かれている現状の課題を分析した上で、設備BIMのあるべき姿を示し、設備がBIMに移行するために何をしなければならないかを、同社技術本部 建設デジタル推進部 次長・伊藤久晴氏が前後編の2回にわたり詳説する。
BIMデータの「横連携」と「縦連携」が必要な理由
2つ目の課題は、「BIMデータの連携」。BIMデータの連携には、各部門の作業を軸とした「横連携」と、時間を軸とした「縦連携」がある。
従来の設備設計は、一般図として作成された意匠の2次元CADデータを読み込み、そこに設備情報を加えて設備図とする。この場合、取り込んだCAD図面が変更していたことに気付かず、設計が終了した後で、再度調整が必要になることもある。各部門間の作業は、同時に進んでゆくので、情報の連携をリアルタイムに行わなくてはならない。そのためには、意匠・構造のモデルをリンクした状態でそれぞれの作業を進めるようにすべきである。これが横連携となる。
また、現状の設備では、設計と施工でBIMモデルの連携はできていない。基本的には従来通り図面での連携を行った上で、施工側で再度干渉チェック用のモデルを作ることになる。構造の鉄骨モデルと工場の鉄骨製作用モデル、構造の基礎モデルと、施工図の基礎躯体モデル、意匠図と連携した総合仮設モデルの作成などとの連携を進めている。設備モデルが
連携可能になると、鉄骨や基礎躯体のスリーブとの連携もスムーズになる。このような縦の連携を進めるためにも、設備でも、設計と施工のモデルは連携しなければならない。
一般的に異なるソフト間の連携には、IFCを使う場合が多い。当社では、Revitによって意匠・構造・設備の統合モデルを作ることにしているので、設備CADからIFCへの変換と、IFCからRevitへの変換という2度の変換が必要となる。
この変換には、半日程度の時間が必要となることに加えて、全てのオブジェクトが完全には変換できない。IFCを使わない変換方法もあるが、より時間が掛かり、そちらも完全な変換とは言いがたいのが実情だ。
統合モデルに不整合があった場合は、設備CADで修正したうえで、再度変換をして統合モデルを作り直している。BIM推進室などの専門部署が統合モデルを作るような特定のBIMプロジェクト物件ならば良いが、全社展開しようとする際には、時間がかかる変換作業を設備部門で行うことが膨大な負担として伸し掛かってしまう。
3つ目は、「維持管理DBとの連携」。維持管理DBは、設備機器のメンテナンスに使われることが多く、設備モデルとの情報連携は必須。維持管理に必要な設備機器の情報を入れたBIMモデルを維持管理DBと連携することで、維持管理モデルを作る労力が大きく軽減できるなど、施設管理者など顧客側のメリットも大きい。しかし、施工段階での維持管理DB
への設備情報のフィードバックの方法などを検討しておく必要がある。このように、設備がBIMに移行するためには、単にツールとしてソフトを変更するだけではなく、設備業務のワークフローを見直し、「後追いBIMからの脱却」「BIMデータの連携」「維持管理DBとの連携」の3つのポイントを解決しな
くてはならない。しかし、設備部門でこれができるようになってもらわないと、目指すBIMは実現できないと言っても過言ではない。
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