【第7回】「迷走する設備BIMの後れを取り戻せ!」(後編):BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(7)(1/5 ページ)
日本での設備BIMがなかなか進んでゆかない。これは大和ハウス工業も例外ではない。しかし、日本の設備業務は、意匠・構造とは異なる“特殊性”があり、これがBIMに移行しにくい原因とされている。しかし、BIMに移行するためには、設備のBIM化を避けて通ることはできない。どう乗り越えてゆくかが重要な鍵になる。そこで、設備BIMが置かれている現状の課題を分析した上で、設備BIMのあるべき姿を示し、設備がBIMに移行するために何をしなければならないかを、同社技術本部 建設デジタル推進部 次長・伊藤久晴氏が前後編の2回にわたり詳説する。
コーディネーションミーティングから学ぶフロントローディングの重要性
これまで実施してきた施工前の“コーディネーションミーティング”の中で印象的だったことがある。或る小規模な介護施設で、鉄骨の梁(はり)貫通スリーブがとても多かった。
そこで、意匠・構造・設備の統合モデルを作って、干渉チェックを行った。鉄骨の梁下と天井との空間が狭いために、配管を通す隙間がないことがわかった。関係者を集め、コーディネーションミーティングを開催し、対策を検討したところ、階高を80上げることで、梁下に配管が納まることが判明した。
しかし、コーディネーションミーティングを行ったのは着工前だったので、階高を変えるという対策が分かっても、実際に対応することはできなかった。階高などの基本的な仕様は、計画の初期段階で決定されている項目である。
この物件は、同じ顧客に対し、基本的に同じプランと仕様で建物を建てるシステム建築による標準化物件のため、次の物件では、コーディネーションミーティングの検討結果を転用して、階高を80上げ、梁貫通スリーブを減らすことが実現した。
階高のような基本的な仕様を変えることは、設計の初期段階でなければ難しい。設計の初期段階で、建物のデザイン、階高や建物のスパンなどを、意匠が構造と相談して決め、実施設計で設備に図面が回ってきて納めることが通常のフローだ。
フロントローディングというのは、設計初期の段階で、建物のデザインや仕様に関する多様な問題を前倒しで解決しておくことを指す。連載の第1回で説明したように、フロントローディングができていれば、後工程での余計な作業時間も作業コストも発生することは無い。さらに、設備の機器や配管の納まりだけではなく、建物のエネルギー効率なども、設計の初期段階で設備が意見すれば、イニシャルコストだけでなくランニングコストも抑える設計が可能になる。
しかし、これまでの仕事のやり方そのものを変えなければ、フロントローディングは机上の空論でしかない。そのためには、設計〜施工〜維持管理といった業務のワークフローの中で、BIMによる情報の受け渡しの在り方を検討する必要がある。
設備BIM 導入のために考えておきべき3つのポイント
このような設備の現状から、設備部門がBIMを導入する際に、考えておくべき3つのポイントを示す。まず、「後追いBIMからの脱却」である。2次元で設計を終えてから、3次元モデルを作るという従来の手法では、どんなに習熟度が上がっても、設備BIMの生産性は向上しない。また、設備モデルの作成が遅いために、干渉チェックをして問題点がわかっても、対応できる段階ではない場合も多い。従って意匠・構造のように、設計作業の中で、先にBIMモデルを作って、そのモデルの情報から図面を作成するという仕組みに変えることが求められる。
後追いBIMでは、2DCADの図面を修正するたび、3Dモデルも修正しなければならず、結果的に図面とモデルの整合性が取れなくなる可能性が高い。図面とモデルで整合性が図れないと、干渉チェックをする意味が失われてしまう。
意匠・構造のように、設計情報を組み込んだモデルを先に作り、できるだけ線や文字の書き込みをしないで、図面の作成ができる仕組みを構築すれば、習熟度の向上に応じて、確実に作業効率は上がってゆく。
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