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【第4回】日本のBIM先駆者が指摘する「日本の施工BIMは、ここに問題アリ!」(前編)BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(4)(3/4 ページ)

設計でBIM導入を先導的に進めている大和ハウス工業でも、施工領域での全社的な取り組みは2020年の4月から始まったばかり。早くから施工BIMに取り組んできた同社が、なぜ、なかなか全社展開に至らなかったのか?その原因を思案するうち、多くの方が頭の中に思い描く、「施工BIMの本質」そのものが間違っていたのではないかという考えに行き着いたという。連載第4回では、同社技術本部 建設デジタル推進部 次長・伊藤久晴氏が、なぜ日本の施工BIMはダメなのか、そしてどう取り組むべきなのかを示す。

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施工図の作成とRevitに精通した担当者が常駐することの意義

 本プロジェクトで施工BIMが成功した要因は、当社がRevitによる施工図を外注した設計事務所で、現場に常駐してもらった担当者の能力に依るところが大きい。設計と現場の間で調整を行い、自ら現場に立ち、Revitを使って施工図を作成し、必要な時に必要なモデルを作成していただいた。彼の力がなければ、施工BIMを完遂することは無かったであろう。

 このように、施工図の作成とRevitの機能に精通した担当者が現場に常駐すれば、BIMはうまくいく。しかし、現実にはそういった人材はほとんど存在しないし、現場にいてもらうことも現実には難しい。


「ダイワユビキタス研究館」のBIMモデルと竣工写真

自分自身で実践してみた現場でのRevitの活用

 ダイワユビキタス研究館が着工してから、ある現場に着任するようにと会社から指示が出た。現場監理の経験はあったが、施工管理の仕事は初めてだったので、戸惑いもあったが、良い機会だと思いやってみることにした。

 せっかく現場に入るのだからと、現場でRevitを使って何ができるか試してみたくなった。幸い、着工が1カ月近く遅れたため、AutoCADの設計図書からBIMモデルを作成し、これまでに取り組んだ施工BIMの資料やテンプレート、ファミリなどをベースに、Revitでできることは何でもやってみようと思い立った。実際にRevitでは、下図に示すように敷地周辺の高低差のある隣地や道路も作成したので、工事のイメージを詳細に把握することができた。


筆者が担当した現場の施工モデル

「Revitがなければ施工ができなかった」

 現場に入って、まず基礎の施工図を作成してみた。下記のようなモデルは、どうしても漫画に見えてしまうようだが、実は、ミリ単位の正確なモデルである。基礎の上に鉄骨を乗せることで、間柱を受ける基礎がないことや、鉄骨階段と基礎の納まりが悪い点など、いろいろな問題点がモデルを作る段階で判明した。

 また、生コンの手配も現場監督の仕事だが、Revitの数量を事前に出して、打設の状況を見ながら手配を行い、余った生コンは1立方メートル程度だった。


基礎モデル

 下図が、根切のモデルと基礎の鉄筋のモデルである。根切の形状を正確にモデルで作ることは難しいが、根切底を色分けすることで業者との打ち合わせや、残土量の数量確認に活用した。基礎のふかしの検討については、経験が少なく図面では判断できなかったので、モデル化して検討を行った。全部をモデル化したわけではないが、厳しそうな部分をモデル化することで、納まっていることを理解できた。さらに鉄骨、外装、内装、外構に至るまで、ほぼ全てのプロセスでRevitを用いた。


根切モデルと鉄筋モデル

 仕上工事に入るあたりで、ベテランの派遣社員に常駐してもらった。最初は、経験の少ない私の下につくことを快く思っていなかったようだが、私が作るRevitの施工図の正確さを理解し、次第に打ち解けるようになった。現場が終わったとき、「もしあなたが次の現場をやることがあったら、ぜひ私を呼んでください」と言っていただきた。これは、何よりもうれしい言葉だった。

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