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【第4回】日本のBIM先駆者が指摘する「日本の施工BIMは、ここに問題アリ!」(前編)BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(4)(2/4 ページ)

設計でBIM導入を先導的に進めている大和ハウス工業でも、施工領域での全社的な取り組みは2020年の4月から始まったばかり。早くから施工BIMに取り組んできた同社が、なぜ、なかなか全社展開に至らなかったのか?その原因を思案するうち、多くの方が頭の中に思い描く、「施工BIMの本質」そのものが間違っていたのではないかという考えに行き着いたという。連載第4回では、同社技術本部 建設デジタル推進部 次長・伊藤久晴氏が、なぜ日本の施工BIMはダメなのか、そしてどう取り組むべきなのかを示す。

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これまでの施工BIMの歩み

 当社の施工BIMは、2007年頃にスタートした。当初、BIM導入は設計からだったが、3次元のモデルと情報は、実際に建物が建ってゆく工事の工程でこそ生かされるとの確信があり、工事部門の若手社員と始めた。

 最初は、Revitで基礎のモデルを作り、躯体(施工図)を書いてみた。ファミリで、コンクリートの「ふかし」などを対応し、基礎のモデルを配置すれば、タグで情報を表示して、モデルと連動した施工図を描くことができた。さらに、根切図や配筋、アンカーフレームの検討、コンクリート数量の算出などに着手。外部足場や工事進捗のモデル化、風による現場の影響を確認するためのシミュレーション解析、ディテール確認のための詳細モデル作成などにもチャレンジした。


2007〜2009年の施工BIMの取り組み

 結果として、初期の施工BIMは、工事担当者にはとても好評であった。2007年前後は、まだ珍しかったし、3次元で納まりを確認するといったことが評判になって、当時は工事担当者に対して何度か勉強会を行った。施工BIMに取り組んでいた工事部門の若手社員と、これは現場の役に立つことだと意気が揚がり、下記のように項目立てて計画を練った。


2007年頃の施工BIM計画

 ところが、残念ながら実を結ぶことは無かった。現場の要求を聞いて、さまざまな資料を作成し、その場では役に立ったので喜んでくれたが、現場担当者でRevitを覚えようとする者は現れなかった。施工図を書いても、自分で修正ができないため意味がなく、数量を出しても、数量の根拠が分からないと、手で集計したもののチェック用にしかならなかった。熱意を持っていた優秀な若手社員も、他の事務作業にシフトしていき、Revitを使うことが次第に無くなっていった。

 そもそも、現場の作業に余裕があるはずが無い。安全や品質、コストの管理に追われ、Revitを覚える暇は皆無だ。

 ここまでの一連の取り組みで、Revitを使って施工図・施工計画図も作れるし、施工数量も出せるという技術的な面での検証は証明できたが、実務にまで展開できる体制を整えられなかったことが、この時点での限界だった。

特殊物件の工事は、BIMは親和性が高い

 世に広く知られるBIMの活用事例としては、デザイン性が高く、施工難易度の高い特殊な物件で適用する例が、数多く発表されている。当社でも、2013年に建築家・隈研吾氏が設計した「東京大学大学院 情報学環 ダイワユビキタス研究館」の建設を行うことになった。研究館は、大和ハウス工業が東京大学に寄贈した建物である。

 施工にあたっては、BIMを活用することが決まった。この建造物は、少しずつ傾斜する鉄骨の柱や梁(はり)を躯体に、不燃処理を施した杉板を用いたウロコ状のファサードが特徴的で、透過性を持つ特殊な土壁なども相まって、暖かみと自然を感じさせるデザインとなっている。

 唯一無二の素晴らしい建物を具現化すべく、BIMによる3Dモデルが重要な役割を果たした。3Dモデルを使って納まりを検討したり、ウロコ状の杉板を位置出しのために使ったり、実にさまざまな場面でBIMを利用した。


Revitで作成した「ダイワユビキタス研究館」のBIMモデル

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