施設業務を止めず保全工事を行う日本メックス、高い技術力を支える充実の“人財育成術”:ファシリティマネジメント フォーラム 2020(2/2 ページ)
日本メックスは1972年の創業以来、建物の維持管理・保全工事を数多く手掛けている。豊富な実績を支えているのは、他ならぬ高度な技術や知識を持った人財の育成にあり、現在では4種類の社員教育をはじめ、品質向上と事故撲滅を目的とした自社トレーニング施設を運用するなど、充実した人材育成術を確立している。
品質維持と事故撲滅、目的ごとに特化したトレーニング施設
日本メックスの人財育成で特筆すべきは、業務内容に特化した研修施設を用意しているところだ。社内には、品質維持と安全性向上を底上げするための「OTC(オペレーション・トレーニング・センター)」と「STC(セイフティ・トレーニング・センター)」の研修施設が整備されている。
OTCは、ビル設備機器の操作や点検をトレーニングして、サービス品質の維持と向上を図る場となっている。技術の分野別に、「電気設備」「空調設備」「防災設備」「衛生設備」「ICT」のコーナーが用意されており、体験型の研修が受けられる。
客先に設置されているのと同様の実機を使用するため、多様な設備に対応した実践的な技術を身に着けられる。一例として、空調設備は一部をスケルトン化し、内部の構造や動きが見えることで、機器の取り扱い方をより深めることができるようにしているという。
一方のSTCは、安全コーナー、模擬体験コーナー、高機能ビルコーナーの3つのカテゴリーから成る。
柳澤氏は、事故撲滅を目標に掲げたSTCでは、体験・体感を通して現場での事故を未然に防ぐ研修が行われていると紹介した。模擬体験コーナーでは、VR用のヘッドマウントディスプレイを装着して、3次元空間で、墜落制止用器具を装着した上での墜落体験、墜落制止用器具を着けると仮設足場上の歩行がどの程度困難になるかなど、仮想体験で危険性を被験者自身に起きた経験として学べる。この他にも、天井内での作業や埋設物の破損防止など、STCには多くの実践的な研修が用意されている。
こうした研修施設は、日本メックスの本社内にある。しかし、本社以外に勤務する社員や関係者に対しても、STCの担当者が支店などに出向き、安全研修を実施しているという。
講演の最後、柳澤氏は「OTC、STCの研修施設を活用して、技術力をさらに磨き、進化と革新に挑み、クライアントの期待を超える価値を提供し続けられる会社でありたい」と抱負を語り締めくくった。
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