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FMに携わる人全員をハッピーにする“人フォーカス時代のFM”とは?ファシリティマネジメント フォーラム 2020(2/2 ページ)

住友セメントシステム開発は、施設の設備や修繕履歴といったFMに関するデータをデジタル化して一元管理する研究を進めている。FMに関する情報が1箇所に集約されれば、管理者だけでなく、オーナーやPMにとってもコストを抑えた修繕計画の立案などに役立てられると期待されている。その先にはBIMとの連携も視野に入れ、BIMモデル上で建築や設備などの各種情報が集約されることで、建物のライフサイクル全体を見渡したFM戦略が立てられると提言する。

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データ一元管理にICT活用、手軽に登録できる仕組みを

 FMに関するデータは、現状では現場や管理会社が個別に保管や蓄積をしている。しかし、その管理ルールはバラバラで、場合によっては散在しているような状態もあるようだ。このデータが一元管理されていれば、立場ごとで必要に応じてさまざまな分析や活用が見込める。


さまざまなステークホルダーが抱える課題

 では、なぜFMのデータはこれまで一元管理できていなかったのだろうか。柳氏はその理由として、現場の忙しさを挙げる。「現場では毎日煩雑な作業があり、なかなか台帳整理や一元管理に向けたツールへの入力作業の余裕がない」(柳氏)。そのため、紙、Word文書、Excelシートなど、情報が統一されていない状態で散在している。

 今の状況では、仮にFMの情報をデジタル化し一元管理しても、日々の作業で負担が増大する。どのようにしてFMデータを一元管理するかというスタート地点そのものに壁が立ちはだかっている。そこで、住友セメントシステム開発は、ICTを使って解決すべく、調査や研究に着手した。

 一つの手法として生み出されたのが、データの入力にスマートフォンやタブレットを使う試み。モバイル端末であれば、カメラや音声入力などの機能を利用してFMデータの入力が簡素化できる。スマートデバイスを介して蓄積されていくデータはデータベース化され、設備機器と修繕履歴が紐(ひも)付けされ、現場での作業履歴を写真で残すことなども可能になる。


課題を解決するICTのキーワード

 ちなみに、現場の写真は、後でエビデンスの確保にも役立つという。例えば、電気使用量のメーター検針時にメーターの数値を撮影すれば、写真が検針作業に対する裏付けとなる。撮影された画像は、電気使用量の数値にリンクしているため、検針の数値とセットで管理される。

一元化されたデータで、精度の高い修繕計画を実現

 施設のオーナーやPMにとっては、機器や設備の点検、メンテナンスといった履歴が画面上で手軽に確認できるため、一元化されたデータは貴重で、より正確な中長期の修繕計画が立てられる。長期の修繕計画では、機器のメンテナンス時期をずらすなどして、年ごとの支出を平らにならすことにも活用が見いだせる。

 例えば、同じ設備で1・2号機が稼働している状況なら、2台を同時に更新するのではなく、修理やメンテナンスの履歴を精査し、更新時期の優先順位を付けることで、他の設備に対する支出との調整もしやすくなる。

 講演の最後に柳氏は、BIMモデルに設備台帳を登載することにも取り組んでいることを明かした。履歴情報は現場サイドで役に立つが、BIMモデルとも連携されているとオーナー側にもメリットがもたらされるという。

 柳氏は、「BIMモデル上で、施設のライフサイクル全体を見据えたFMの下地づくりにも活用していただけるのではと期待している」と、BIM活用の可能性を語り、講演を終えた。

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