優れた耐震性の木造大スパンを実現させる新工法を開発、三井住友建設
三井住友建設は、木質構造建築物の梁にPC鋼材を組み込み、プレストレスを導入して柱に接合する新たな工法「プレストレスト木質構造」を開発した。この工法によって、優れた耐震性を有し、単一の木質部材で従来よりも解放的な大空間や大きな開口を実現し、自由な間取りの設計が可能になる。
三井住友建設は2018年8月7日、優れた耐震性と大スパンを実現する「プレストレスト木質構造」を開発したと公表した。新工法により、単一の木質部材で、これまでよりも大型の空間や開口が可能になり、自由な間取りも選択できるようになる。
柱梁接合部に鉄筋コンクリート(RC)造を採用し、地震時でも復元
開発の背景には、現在地球環境への配慮から木材資源の活用が注目されており、木質構造の適用範囲を中・大規模建築物へも拡大するニーズが高まっている。オフィスビルや商業施設などで大スパンによる大空間・大開口を採り入れる場合、木質部材をトラス構造や鉄骨との混合・合成構造として行うことが一般的となっている。そこで、三井住友建設は橋梁分野で培ってきたプレストレス技術を木質部材に応用することで、単一の木質部材であっても8m(メートル)を超える大スパンを実現する「プレストレスト木質構造」を開発した。
通常、木質部材は繊維直角方向の圧縮力に弱いため、その方向にプレストレスを導入すると、梁部材が柱部材にめり込み、耐力の低下や地震後の残留変形を生じてしまう。
新工法では、めり込みの損傷防止やより大きなプレストレス導入のために、柱梁接合部に鉄筋コンクリート(RC)造を採用した。PC鋼材をRC造の柱梁接合部にも貫通させて緊張することで梁が柱に圧着し、大地震による変形時にも、PC鋼材がフレームの変形を元の位置に戻す力を発揮する。「地震時の復元機能」と「接合部耐力の向上」をともに与えることが実現した。
構造実験をした結果、階高に対する水平変形量の比率「層間変形角(水平変形量÷階高)」の10分の1程度まで最大耐力を保持し、地震後にもほとんど残留変形のない優れた復元機能を有することが確認された。また、集成材、LVL(単板積層材)の長期軸方向荷重下におけるクリープ特性を確認するための実験も並行して行われ、木質部材にプレストレスを導入した際の長期的な緊張力の変化についても性能を検証しているという。
三井住友建設では今後、新工法の設計法・施工法を整備して、大規模商業施設、中低層の事務所ビル、公共施設を対象に、上質で落ち着いた木質大空間の創出や耐震性やサスティナブルに優れた工法の実現に向け、さらなる技術開発を進めていくとしている。
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