フジタが標定点が完全に不要な新ドローン測量手法を山口大と共同開発:ドローン
フジタは、山口大学と共同で、標定点の設置や回収が不要な造成地向けの新たなドローン測量手法を開発した。
大和ハウス工業グループのフジタは2020年1月、山口大学と共同で、造成地を対象とした独自のドローン測量手法「斜め往復撮影ドローン(高精度GNSS測位搭載型)」を開発したと明かした。
i-Constructionの要求を満たす値を達成
新手法は、カメラ角度を斜めにして撮影することで、標定点と呼ばれる測量用の目印を設置せずに、とくに精度を出しにくい高さ方向の測量精度を向上させる。施工を進める千葉県野田市や茨城県つくばみらい市などの造成現場で実証試験を行った結果、高さ精度の誤差で23ミリという国土交通省が推進するi-Constructionの要求を満たす値を達成し、有用性を確認した。
標定点を完全に無くすことで、測量にかかる時間を大幅に削減するため、作業時間を従来と比較して最大4分の1に短縮できることが分かっている。
共同開発に参加した山口大学 創成科学研究科 神野有生准教授の研究室は、ドローン測量のSfM解析で生じる誤差への対策として、撮影の向きや高度に多様性を持たせる斜め撮影の研究をこれまで検討していた。
今回の開発では、神野研究室でカメラ角度や画像セットなどの撮影設定、SfM解析の条件、パラメータ設定を5000ケース以上の解析実験に基づいて造成地向けに精密に分析し、調整して、フジタが造成現場で繰り返し検証を行った。
結果として、標定点を完全に省略し、GSD(地上画素寸法)20ミリに相当する高精度のドローン測量で、国土交通省で示された出来形管理の基準値である測量精度±50ミリ以内という数値を達成した。
新手法のワークフローは、ドローンの飛行時にカメラ角度を斜め(10〜30度)に設定し、複数方向から対象を撮影する。その後、画像サイズや抽出する特徴点数などの詳細検討に基づくSfM解析に取り組むことで、標定点を設置せずに、鉛直方向の撮影を省略しても精度が保てる。
共同開発に至った経緯には、標定点の設置と回収でかかる手間を省くために、標定点が完全に不要なドローン測量手法が業界で望まれていたことがある。通常ドローン測量をする場合は、トータルステーションを使用した従来通りの測量で標定点の座標を求め、計測対象範囲内に100メートル以下の間隔で標定点を設置することが規定されている。
GNSSを搭載した標定点の使用による事前測量の省略や高精度GNSS測位を備えたドローンによる標定点の削減などで効率化を図ることも可能だが、完全に標定点を無くすことは難しい。
また、ドローンで撮影した画像から3Dモデルを生成するSfM解析で、従来の鉛直平行飛行で撮影した画像だけの処理では高さ方向に大きな誤差が生じる問題があり、標定点の設置無しでは、本来は平たんな地形をドーム状・ボウル状などになどにゆがめて推定してしまっていた。
今後は、急峻(きゅうしゅん)な地形など厳しい条件下で新手法により実証データを蓄積し、さらに効率化や高精度化を推進し、標定点の設置を原則とする国土交通省の基準要項の改定につなげていく方針を明示している。
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