脆弱地盤のトンネル工事で、地山の大変形に追従する「新ロックボルト工法」:山岳トンネル工事
大成建設は、建設用あと施工アンカーを開発しているケー・エフ・シーとともに、高地圧・脆弱地盤の山岳トンネル工事を対象にした安全性と生産性を高める新しい工法を開発した。
大成建設は、ケー・エフ・シーと共同で、山岳トンネル工事において、大きな土被りに伴う高い地盤圧力や脆(ぜい)弱な地盤条件により生じる大変形に追従し、湧水が発生する条件下でもロックボルトを破断せずに支保効果を発揮するロックボルト施工法「T-Flexible Bolt」を開発した。
地山条件に応じて注水圧を制御、地山の定着力を調整
発破を行う山岳トンネル工事では、掘削後に地山の崩落や変形を防ぎ、安定した状態で作業するため、ロックボルトを地山に打設している。しかし、トンネル壁面が大きく変形する場合は、耐力を超える荷重がロックボルトにかかり、トンネル壁面の緩んだ地山の範囲内で破断する懸念がある。そのため海外では、トンネルの大変形を吸収する機構を持つ可縮ロックボルトが適用されているが、湧水が発生する箇所は、ロックボルトが地山に定着する前に注入した充填(じゅうてん)材が流出してしまうという課題があった。
大成建設とケー・エフ・シーが開発したT-Flexible Boltは、地山の条件に応じ、注水圧を段階的に制御しながら、ロックボルトを地山に定着させることで支保効果を保持できるため、地山の大変形に追従し、湧水条件下でも導入することができる。
掘削直後に地山が大きく変形するときは、ロックボルトへの注水圧を一定圧力に制御し、地山への定着力を調整することで、支保効果を保ちながら、地山変形に応じて、トンネル周辺の岩盤を固定し続ける。
また、地山変形が収束する段階ではロックボルトに再度注水・加圧することで、地山への密着を確実にし、ロックボルトの支保効果を最大限まで発揮させる。
ロックボルト内の注水圧は、注水装置に取り付けられた切替スイッチで変更し、注水圧の高低や再加圧のタイミングは、注水圧モニターや地山の変形状況を確認しながら、柔軟に調整することができる。
トンネル内空側のロックボルト頭部には、貫通孔を設けるなどの改良を施し、プレート、ナットを取り外すことなく、注水アダプターを装着して再加圧するので、注水時の作業性にも優れる。
新工法による他の利点としては、ロックボルトの損傷や破断を防止するため、破断した際の再打設などにかかるコストや工程遅延を抑えることにつながる。材料費についても、従来の鋼管膨張型摩擦式ロックボルトを利用しており、増加ほとんど増えないという。
今後、大成建設は、T-Flexible Boltを用いて、地山条件の異なる複数の現場で実証試験を行い、効果を検証しつつ、高地圧・脆弱地盤の条件下での山岳トンネル工事で、実工事への適用に向けた検討を進めていくとしている。
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