作業員1500人の声を反映した建設向け新型バイタルセンサー、ルーターと連動し位置を検出:現場管理
近年、日本では気温が上昇し、特に夏場の建設現場では、熱中症のリスクが高まるなど、屋内外問わず作業員の働く環境は悪化している。セイコーインスツルではこういった状況を踏まえ、作業員の見守りに役立つ新型のバイタルセンサーを開発した。
セイコーインスツルは2020年1月28日、2018年5月に発売した腕時計型バイタルセンサーを大幅に改良し、実用性をアップさせた新モデルを開発したことを発表した。
体表面温度や脈拍を表示
新モデルは、温度や脈拍、加速度といった各種センサーを内蔵し、使用者の体表面温度、脈拍などの生体情報をはじめ、転倒などによる加速度の異常を計測する。取得した情報は、920MHz帯の無線を使って、専用のベース(親機)に一定間隔で送信し、作業員の見守りを遠隔で行える。
通信には、920MHz帯を使用しているため、無線LANやBluetoothなどの2.4GHz帯と比べ通信距離が長く、障害物の多い室内でも電波が届きやすい他、専用のルーター(中継機)を活用することで、広範囲で安定して使える。また、1日10時間/5分間隔の計測であれば、約1年間稼働する電池式を採用しており、毎日の充電が不要で、給電し忘れによるバッテリー切れを心配する必要がない。
これらの基本機能に加え新モデルでは、時刻や体表面温度、脈拍を表示する液晶画面を設置している。緊急事態が発生した際に、使用者の判断で警告を発信できるヘルプボタンも搭載。現場における操作性や装着性、堅牢(けんろう)性を高めるためにデザインもリニューアルしている。
さらに、広大な敷地や多層階の建設現場などにおいて、複数台のルーターを配置することで、バイタルセンサーからの電波の受信強度で、作業員がどのルーターの付近にいるかを測定し、簡易的な位置検出が進められる。このため、大勢の作業員を抱える建設現場での使用に適している。
新モデルは、戸田建設の協力のもと、2017年12月から2018年12月まで、建設現場において、約1500人の作業員に従来モデルを装着させ、得られた評価や、作業員の生の声を元に改良を加え、実用性を大幅に向上させた。
新モデルのサイズは50(幅)×22(奥行き)×57(高さ)ミリで、材質は本体がプラスチック製で、バンドはナイロン製。防水はIPX5/IPX7の規格に対応している。価格はオープンプライスで、2020年3月末のリリースを予定している。
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