生体センサーで現場作業者の安全を管理、大林組がサービス販売へ:情報化施工
大林組は心拍数などの生体情報を取得できるバイタルセンサーを活用した現場作業員の安全管理システムを開発した。遠隔地からでも熱中症の危険や転倒などの検知を行うことができるシステムで、2017年7月をめどにサービスとして外販を始める計画だ。
心拍数などの人の生体情報を取得できるバイタルセンサー。大林組はこのバイタルセンサーを活用した安全管理システム「Envital(エンバイタル)」を開発した。2017年7月から外販を行う予定だ。
Envitalは東レとNTTが開発した機能素材「hitoe」を利用したバイタルセンサー(「hitoeトランスミッター01」)を備える作業着と、大林組が開発した環境センサーを利用する。作業着のバイタルセンサーで就労者の心拍数と作業姿勢を、環境センサーで暑さ指数(WBGT)などの作業場所の環境データを取得する仕組みだ。
取得した情報は就労者の所有するスマートフォンを通じて、NTTコミュニケーションズが提供するクラウドサーバにアップロードされる。そこで取得した情報を解析し、心拍数や作業姿勢の異常、作業場所の温度が一定以上になった場合などに作業者のスマートフォンや、管理者に通知する。これにより作業員本人や管理者が効率よく体調管理を行える他、早い段階で事故防止を目的とした対策も取りやすくなるというシステムだ。
温暖化による気温上昇が進む中、特に建設現場において夏場の現場作業は非常に厳しい環境になる。事故防止の観点から、作業員の体調を適切に管理し、確実に安全を確保する取り組みが求められる。大林組では熱中症対策として、簡易測定器などを用いて暑さ指数を計測して事故の予防に活用してきた。しかし、個々の作業員の体力や体調に差があることや、作業場所ごとの環境の違いなどから熱中症事故の根絶は難しい状況にあった。
そこで大林組はEnvitalの開発に着手し、2015年春からNTTコミュニケーションズと共同で建設業や製造業の現場において実証実験を進めてきた。2016年には延べ300人を超える作業員を対象とした大規模実証実験を行っている。こうしたその結果を基にシステムのカスタマイズを行い、今回サービスとして外販することを決めた。
1事業所(50人)で、暑さ指数の値測定点を4カ所と想定した場合の初期導入費用は、システム設定費が10万円、作業着が1人3枚で150万円。バイタルセンサーと環境センサーはレンタルで、システム利用料を加えた月額利用料は40万円が目安になる。
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