鹿島建設がシールド掘進工事の事故を予測するシステムを開発:情報化施工
シールド工事は、機械化や自動化により、少人数の施工体制が確立されつつあるが、掘削する地山の性状によっては、事故のリスクが依然高いのが現状だ。特に近年、シールド工事は大断面や大深度、長距離化ならびに既設構造物との近接施工といった技術難度が高い工事が増加しており、施工中のトラブルや災害の発生が懸念されている。鹿島建設はこういった状況を考慮し、施工中の事故を未然に防ぐシステムを開発した。
鹿島建設は2020年1月15日、シールド掘進時に収集されるデータから事故を予測して施工管理にフィードバックする管理支援システム「KSJS(Kajima Shield Judge announce System)」を開発したことを発表した。
経験の浅い作業員の対応を迅速に
KSJSは、過去の施工実績を踏まえた熟練オペレーターの経験や操作記録に基づき、シールド掘進中に得られるデータを統計処理し、これらの情報における変動傾向を自動的に分析して、トラブルにつながるリスクを評価する。
危険な場合は、アラートで注意喚起を図るとともに、確認すべきデータの変動や対応策などを中央管理室やシールド機のモニターに表示するため、オペレーターや作業員の見落としを防げ、経験の浅い作業員の迅速な判断や対応もサポートできる。
さらに、事故に結び付く施工データの変動状況を組み合わせて、地盤変状や掘進不能、セグメント損傷、線形逸脱といった想定される事態のリスクを点数化し、段階的に1次警報および、2次警報をモニターに映し注意を促すので、それぞれのアクシデントに優先順位を付けて対処可能だ。
KSJSの開発背景には、シールド工事の掘進中に得られるデータが膨大なため、これまで管理が難しかったことがある。施工中は社員とオペレーターが操作モニターに表示されるデータを監視するが、データが多量であることに加え、複数の事象を同時に視聴し、判断する必要があることから、事故の前触れとなるデータの変化を見落としたり、ある事象に着目している際に他の重大なトラブルにつながる前兆を見逃すというケースがあった。特に、熟練社員や作業員が不足する近年では、このようなリスクが上昇傾向にある。
KSJSは既に、東京都芝浦水再生センター・森ヶ崎水再生センター間連絡管建設工事その2(泥水式シールド)や茨城県下のガス導管工事(泥土圧式シールド)に適用しており、その有効性を確認しているという。
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