「目指すはアジア・中東でのシェア確立。カギは新IoTダッシュボード」、日立ビルシステムの事業展望を聞く:次世代のスマートビルサービス(3/5 ページ)
日立ビルシステムは、事業の柱であるビルシステム事業で、日立のIoTプラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」をコアに据えた新規サービスの開発に力を入れている。これまで売り上げの大半を占めていたエレベーター(EV)やエスカレーター(ES)の製造販売と保守点検だけにとどまらず、ビル設備の領域でも事業を拡大させ、昇降機とビルサービスの両輪でグローバル市場でのシェア獲得をうかがう。
デジタル技術でサービス高度化と、建物全体のイノベーション
――ビルシステム事業全体の構想
松尾氏 ビルシステム事業全体での展望としては、Lumadaとグローバル管制センターの両方を中心に置き、昇降機で保有している販売チャンネルのビルサービスへの活用を加速させる。統合型のファシリティマネジメント機能を備えるビルオートメーションシステム(BAS)「BIVALE」や設備リニューアルの提案にも力を入れていく。
さらに、ビルに関するIoTやビル入居者向けのこれまでに無かったソリューションを開発し、新事業も創出。設備も含めビルサービスを包括的に提供できるようになれば、他社との差別化や日立製昇降機の囲い込みにもつながる。
――ビルサービス事業の強み
松尾氏 ビルサービス事業では、ビルICTサービスや設備リニューアル、省エネ提案といった付加価値向上の軸と、ビルメンテナンスによる資産の管理維持の両軸で、施設利用者や居住者の「安心」「安全」「快適」「便利」をワンストップで提供している。
オーナーや管理会社が利用するBIVALEは、昇降機で培った技術やサービスを、ビルファシリティ全体に転用して、EV/ES、受変電、サイネージ、案内ロボット、監視カメラ、顔認証システムなど、全てがクラウドで「つながる」サービス。国内で先行している複数棟の一元管理やビル内テナントの個別管理にも応じ、収集したデータから稼働状況を見える化し、設備制御を最適化させる。
BASは一般的に、OSのバージョンや通信規格の違いで、設備機器の導入が壁になることが多いが、BIVALEはクラウドかつオープンタイプのため、機器を後付けできる拡張性に優れ、サーバの維持管理が要らず初期投資も必要としない。
現在では、オフィス、マンション、商業施設、物流施設、ホテル、学校、医療施設など約7000棟、昇降機設備で約16万台、空調設備で約1万台、ビル設備で約2万4000基を日々モニタリングしている。
松尾氏 BIVALEの強みはセキュリティにある。日立製作所の技術を生かした大規模ビルや公共施設のセキュリティと、日立ビルシステムが得意とする防犯カメラシステム、オフィス/マンションセキュリティ、セキュリティ診断などが融合することで、ビルを丸ごと守り、安心・安全の環境を創り出す。BIVALEは、グローバル管制センターともつながっており、万一のトラブルの際には、全国300カ所ある最寄りのサービス拠点からエンジニアを緊急出動させて対処にあたる。
ビルサービスの新規事業に関しては、サービス付きオフィスやシェアオフィスをターゲットに、2020年4月に製品化した顔認証や監視カメラ、個人認証などのセキュリティ面はもちろんながら、画像解析によるエレベーター最適運転、コミュニケーションロボット「EMIEW」などを訴求していく。オフィスビルや商業施設には、日立グループの技術を転用して、入居テナント同士をマッチングさせるサービスなど、AIによる行動分析やマーケティングも含めた空間×ICTによる次世代のスマートビルサービスを構想している。
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