大成建設は2019年11月21日、神奈川県横浜市の技術センターにおける施設拡充計画の一環として、防耐火実験棟に業界最大級の能力を備えた大型壁加熱炉を新設し、同年11月から運用を開始したことを発表した。
大型壁加熱炉は、実大壁部材に実際の建物と同等の荷重を加えた状態で、長時間、急速昇温、超高温という過酷な火災条件下で加熱することができるため、部材の耐火性能を確かめられる。
部材の熱変形や内部温度などの測定項目に対応
建物で発生する火災は、室内に可燃物量が多く、窓や出入口など開口部の面積が小さい部屋で、長時間継続する場合があるという。そのため、室内の可燃物量に基づいて建物に必要な部材の耐火性能を設定する性能設計が求められており、載荷(さいか)状態での長時間に及ぶ加熱試験による部材の耐火性能に関するデータの蓄積が重要になっている。
また、道路トンネルのような長大空間において、車両事故などで火災が生じた場合、トンネル内に熱が籠(こ)もりやすく、数分で1000度を超えるような急速な昇温と超高温を想定した部材の検証が必要とされている。だが、これらの条件を満たす能力を備えた試験装置は国内でも極めて少なく、試験装置を用いた部材の耐火性能検証が困難な状況だったという。
大成建設は、実大壁部材の耐火性能検証を実現するため、部材に載荷(さいか)した状態での長時間加熱や急速な昇温、超高温加熱など複数の加熱条件に対応する大型壁加熱炉を建設し、運用を開始するに至った。
大型壁加熱炉は、有効加熱寸法が3.5(幅)×3.4(高さ)メートルで、実大壁部材に約100トンまで鉛直(えんちょく)に載荷した状態で加熱試験を行えるため、火災時における部材の熱変形や内部温度など多様な測定項目に基づき、耐火性能を評価可能。
また、性能設計で要求される最長6時間までの加熱を続けられ、より過酷な条件下での実大壁部材の長時間加熱試験に応じている。
道路トンネルで発生する火災を想定した試験は、出火から5分で1200度に達するRABT加熱曲線※1に対応した急速な昇温、超高温な状況下での部材の耐火性能検証を要するため再現が難しい。大型壁加熱炉はこの問題点も解消しており、従来の建築火災用バーナーに加え、道路トンネル用バーナーを有しており、実際のトンネル火災のような加熱状況で性能検証が進められる。
今後、大成建設は、土木・建築分野を問わず、大型壁加熱炉を利用した載荷加熱試験により集積した部材の防耐火性能データをベースに、耐火性能に優れた新材料や新構工法の技術開発を進めていく。
※1、RABT(ドイツ交通省、道路トンネルの設備と運用に関する指針)で規定された加熱曲線。道路トンネル内で可燃物を満載したトラックに火災が生じた場合に想定されるトンネル内の温度変化を設定している。
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