清水建設とニチアスは共同でこのほど、鉄骨大梁(はり)の耐火被覆工事の施工性を向上させる2時間耐火の薄肉型巻付け耐火被覆材を開発した。ニチアスがマキベエのラインアップに加え、「高密度仕様25ミリ品」として発売する。
薄肉型の巻付け耐火被覆材で、施工負担を軽減
開発の目的は、吹付工の不足や現場環境の改善を要因に、これまでの湿式に代え、「乾式」の巻付け型耐火被覆材を採用する現場が増えていることがある。巻付け型の耐火被覆材は、運搬や巻付けといった一連の作業で、負担軽減のためのスリム化が求められていた。
こうした需要を見込み両社は、従来製品よりも薄手ながら、同等の耐火性能を発揮する薄肉型の巻付け耐火被覆材マキベエの高密度仕様25ミリ品を開発した。マキベエは、製鉄所から排出されるスラグ(鉱物成分)と、天然鉱石を高温で溶融した溶液を遠心力で繊維化し、表面に難燃性の着色不織布を接着させた2層構造の耐火被覆材。
耐火性能を維持しつつ、巻付け耐火被覆材をスリム化させるためには、単位面積あたりの原材料密度を高める必要があった。そこで、繊維化/集綿の製造ラインで、原材料の密度を安定的に高められる条件を模索し、製品化させた。同性能の従来仕様40ミリ品に比べ、25ミリ品は40%近く薄く、1平方メートルあたりの重量は3キロと、従来との比較で1キロ、25%を軽量化させている。
開発にあたっては、清水建設が基礎実験や施工性の検証、ニチアスが製品仕様の選定を担当し、両社で耐火認定取得に向けた性能確認実験を行った。耐火性能については、鉄骨大梁を対象に、一重巻きで耐火2時間、二重巻きで耐火3時間の国土交通大臣認定を取得している。
既に、25ミリ品については、施工中の東京ワールドゲート「神谷町トラストタワー」の大梁の一部に4万6000平方メートルを適用し、厚手の従来製品よりも施工性が10%程度向上することが確認されている。
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