パスコの最新ICT測量や請負契約の電子化など、生産性向上につながるセミナー:i-Construction(3/3 ページ)
ヒューマンタッチ総研は、「建設業界のための、ICTを活用した生産性向上と働き方改革セミナー」を開催した。会場では、i-Constructionに対応するために必要な最新のICT測量技術をはじめ、realwearのスマートグラス、建設業でも広がりが期待される電子契約など、さまざまなソリューションの導入事例が紹介された。
「紙」と「ハンコ」の契約との違い
「紙」と「ハンコ」の契約の問題点としては、電子契約に比べ、企業の競争力や生産性の低下を招いていたことがある。同時に、偽造ハンコのリスクにより、書記官が裁判官を装い押印していた裁判所での押印偽造事件、陰影から3Dプリンタで実印を作った不動産業界での地面師事件など、実害も起きている。「実印のセキュリティは、現代ではほぼ無いに等しい」(橋詰氏)。
一方でクラウドサインは、契約締結から契約書管理までをクラウド上で一元化したシンプルなサービスとなっている。契約交渉済みの契約書をアップロードして、相手方が承認するだけで締結。書類の受信者は、クラウドサインに登録する必要も無いため、相手側に手間もコストもかけることは無い。
橋詰氏によれば、「従来型の電子契約の欠点は、受信者(取引先・顧客)に手間とコストを強いていたこと。その点、クラウドサインは取引先に代わり、弁護士ドットコムが電子署名を施す方式を採用している。セキュリティは、アクセスコードとワンタイムパスワードの2段階認証で、本人性も担保する」。
建設業界では、建設業法19条に請負契約の電子化に対する規定として、国土交通省で定めるものであれば認める旨が規定されている。クラウドサインにおける適法性は、グレーゾーン解消制度を利用して、経済産業省と国土交通省に要件を満たすことの確認を申請し、適法であるとの回答を既に得ているという。
橋詰氏は、「導入企業からは、他のサービスに比べ使いやすいという声をいただいている。クラウド型電子契約であれば、契約締結までのリードタイムの短縮やコンプライアンスとセキュリティ強化が可能になる上、人件費や輸送費がかからず、印紙税も非課税のため、確実にコストを削減できる」と利点をPRして締めくくった。
realwearの「HMT-1」を装着したデモ
ブイキューブは、技術本部 第4エンジニアリンググループ グループマネージャー 内藤高史氏が登壇し、人材不足を解消すると謳(うた)ったスマートグラスのデモを行った。
施工管理の業務や現場監督が抱える建設現場の問題としては、工事進捗を確認するため、現場間を移動しなければならず、その際の時間や交通費がネックとなっていることがある。
内藤氏は「スマートグラスであれば、現場に足を運ばなくても、遠隔から現場を確認し、施工管理や現場監督の負担を減らすことができる。また、通常は作業ミスを防ぐため多重チェックを行うが、その場合は2人以上で現場に向かう必要があった。しかしスマートグラスを装着して1人が遠隔から確認すれば、コストや作業工数の削減につながる」とメリットを説いた。
スマートグラスの導入事例では、りんかい日産建設の陸上工事での鉄筋やコンクリート打設の出来形確認に採用。このうち、港湾工事では、高さ20メートルの巨大なケーソンを作るフローティングドッグで活用された。この現場では、事務所と離れているため、移動に時間を要していたが、スマートグラスのおかげで、離れた場所に居ながら円滑なコミュニケーションが図れるようになったという。
ブイキューブが推奨する最新スマートグラスは、realwearの「HMT-1」と、日本の防爆TIIS基準に準拠した「HMT-1Z1」。ともに100%ハンズフリーの音声のみによる操作で、ボタンやタッチ、ジェスチャーの操作は必要ない。ディスプレイは、7インチディスプレイに匹敵し、明るい日差しでも見やすい画面を搭載している。耐久面では、IP66レベルの防塵(ぼうじん)、防水に対応し、心臓ペースメーカーに使用するレベルの安全性電池を備える。
この他セミナーでは、建設ITジャーナリスト・家入龍太氏による「『ポスト五輪』の建設現場で働くロボット、AIは3Dプリンタや建機、BIMなど意外な形で登場する」と題した基調講演をはじめ、富士通総研 コンサルティング本部行政経営グループ マネジングコンサルタント・若生幸也氏の建設業界における働き方改革のポイント解説、SAT代表取締役社長・二見哲史氏による管理者不足を解消するeラーニングを活用した施工管理技士の資格取得レクチャーなどが展開された。
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