耐火吹付けロボットの実用化を後押しする「巻付け」「吹き付け」のハイブリッド被覆工法:ロボット
鹿島建設は、鹿島フィット、万象ホールディングスと共同で、鉄骨造建物の耐火被覆工事に「巻付け」と「吹き付け」の2通りの工法を併用する「ハイブリッド耐火被覆工法」を開発した。
鹿島建設は、鹿島フィット、万象ホールディングスと共同で、鉄骨造の建物を対象とした耐火被覆工事に、「巻付け」と「吹き付け」の2通りの工法を併用する「ハイブリッド耐火被覆工法」を開発した。既に1時間から3時間の耐火で国土交通大臣認定を取得するとともに、都内で施工中の建築工事において、梁(はり)の耐火被覆作業に適用したという。
下フランジと、ウェブ・上フランジで2通りの工法
ハイブリッド耐火被覆工法は、耐火被覆の吹き付けで難度が高く、脱落の恐れがある“下フランジ”には、吹き付けではなく高耐熱ロックウールフェルトを巻き付け、ウェブと上フランジには「高耐熱粒状綿」という新たな被覆材を吹き付ける2通りの工法を組み合わせている。
高耐熱粒状綿は、通常の粒状綿に比べて、繊維が細く短いため密度が高く、熱収縮率が小さい。本材料単体での国土交通大臣認定(1〜3時間耐火)は、2017年1月に既に取得している。
従来の被覆材では、被覆部に必要な密度を確保するため、吹き付けた後に鏝(こて)を用いた押さえ作業が必要だったが、高耐熱粒状綿では通常のロックウールより密度が高いため、鏝押さえが不要になる。被覆の厚さも薄くできるため、作業の省力化や材料コストの低減が図れる。
下フランジは、ロックウールフェルト巻きにすることにより、吹き付け作業で多く発生する被覆材の飛散が無くなり、作業環境の改善がもたらされる。
新工法の採用で、下フランジは人手による巻付け、ウェブと上フランジはロボットによる吹き付けといった作業分担が可能となり、鹿島建設が掲げる「鹿島スマート生産ビジョン」における耐火被覆吹付ロボットの実用化が大きく前進するという。
鉄骨造の建物は、火災時の崩壊を防ぐ目的で、鉄骨の表面に耐火被覆処理を施す必要がある。一般的には、ロックウールをセメントスラリーと混合した被覆材を鉄骨に吹き付けている。この作業時には、粉じんが発生するため、防塵(ぼうじん)マスクなどの保護具を装着する必要があり、作業者の負担となっていた。
鹿島建設が策定した「鹿島スマート生産ビジョン」では、「作業の半分はロボットと」をコアコンセプトの一つに位置付け、繰り返しや苦渋を伴う作業、自動化により効率や品質にメリットが得られる作業などを対象に、自動化・ロボット化を推進している。とくに耐火被覆作業は、建設現場で苦渋を伴う作業として、将来のロボット化に向けた取り組みを推進している。
ハイブリッド耐火被覆工法は、2018年9月に「1時間耐火」、2018年11月に「2時間耐火」、2019年2月には「3時間耐火」の国土交通大臣認定を取得。都内で施工中の建築工事では、10本の梁(800×300×16×32、長さ約15m)の耐火被覆作業に試験的に適用した。
鹿島建設では、名古屋市中区の「(仮称)鹿島伏見ビル新築工事」で、耐火被覆吹付ロボットをはじめ、各種施工ロボットなど18の新技術の検証を進めている。今後は、開発した耐火被覆吹付ロボットの実証と改良を進め、人とロボットの協働による耐火被覆作業の実現を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 鹿島が溶接ロボット10台をビル新築工事に本格導入、専属オペレータ8人と梁588を溶接
鹿島建設は、愛知県名古屋市で施工中の「(仮称)鹿島伏見ビル新築工事」で、汎用可搬型の溶接ロボットを本格導入した。現場では、グループ会社の鹿島クレスが、溶接ロボット10台とオペレータ8人で、柱10カ所、梁585カ所を溶接した。 - 屋上に設置するだけ、中低層ビルにも範囲を広げた鹿島の制振装置「D3SKY-c」
鹿島建設は、超高層ビル向けの超大型制震装置「D3SKY(ディースカイ)」を改良して、新たに中低層ビルを対象にコンパクトで低コストの「D3SKY-c」を開発した。既に、宗家源吉兆庵の9階建て銀座新本店や芝浦グループの10階建て銀座ビルといった中層建築の新築工事での適用が決まっている。 - “効率化”と“労働力不足”を解決する物流自動化を見込んだ施設設計、野村不の新コンセプト「カテゴリーマルチ」
野村不動産は、同社が物流の新コンセプトとして掲げる「カテゴリーマルチ」を採用した大規模な高機能型物流施設「Landport青梅I」を2018年11月末日に竣工し、運用を開始した。 - 鹿島が“建機の自動化”をダム工事で本格導入、5時間の盛立作業に成功
鹿島建設が開発を進める建設機械を自律自動化するICT技術「A4CSEL」がダム建設工事に本格導入され、計7台の建機が5時間にわたって無人で連続作業を行うことに成功した。次の段階では、30台ほどの建機を投入し、建設現場の「工場化」を目指す。