西松建設ら、アプリで切羽評価を行える「切羽評価システム」を開発:山岳トンネル工事
西松建設はsMedioと共同で、山岳トンネルの切羽評価を行うためのAI(人工知能)活用技術『切羽評価システム』を開発した。観察作業の効率化や評価精度の向上を目指す。
西松建設は2019年10月02日、sMedioと共同で山岳トンネルの切羽評価を行うためのAI(人工知能)活用技術「切羽評価システム」の開発を発表した。同社では、山岳トンネル工事におけるさまざまな課題をAIで解決するために「山岳トンネルAIソリューション」の構築を2018年度から進めており、今回のシステムは「掘削(くっさく)サイクル判定システム」に続いて開発された技術だ。
切羽評価システムは、専用のiPadアプリなどで撮影した切羽写真を用いて、切羽観察簿の各項目をAIで評価する。AIは西松建設が開発した技術「DRISS」による膨大な探査実績を切羽写真と組み合わせて深層学習(ディープラーニング)しており、写真から地山強度も推定できるという。切羽写真の撮影やAIによる評価はiPadアプリ1つで実施可能なため、観察作業の効率化や地山性状の把握の迅速化が期待されている。
アプリ内では、AIの評価に加えてコメントなどの入力も可能だ。これらのデータはクラウドに保存され、所定の観察簿の形式でダウンロードできるため、観察簿の作成を効率的に進めることができる。また、現場を支援する部署では、クラウドに蓄積された写真、評価点、DRISS地山強度などの各現場の実績をAIに学習させて、現場での判定にフィードバックが可能だ。これにより、判定精度の継続的な向上を図ることができる。
山岳トンネル施工の安全性や施工性を確保するためには、切羽の地質状況を把握することが重要である。そのため、少なくとも1日1回の頻度で目視を主体とした切羽観察が実施されている。切羽観察は「切羽の状態」や「風化変質」などの所定の項目に基づいて切羽評価を行うものであり、切羽の安定性や支保(しほ)の妥当性の検討に欠かせない。そこで、山岳トンネル施工に不可欠な切羽観察をサポートし、観察作業の効率化や評価精度の向上を行うためのAI活用技術である切羽評価システムを開発したという。
今後同社は、山岳トンネルの省人化・無人化施工を目指した山岳トンネルAIソリューションの構築を引き続き推進し、山岳トンネル工事の自動化、生産性向上、労働災害の低減などを進めていく。
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