“余掘り量”を3Dスキャンして最適な発破パターンに、清水建設が新東名に適用:山岳トンネル工事
清水建設は、山岳トンネルの発破掘削を効率化させるため、3Dスキャナーで発破後の切羽面を計測して、次の火薬挿入孔の削孔位置と角度を自動調整するシステムを実用化した。神奈川県内の新東名高速トンネル工事で順次適用していくという。
清水建設は、山岳トンネルの一層効率的な発破掘削に向け、余掘り量低減システム「ブラストマスタ」をサンドビックと共同開発し、実用化することに成功した。既に新東名高速の谷ヶ山トンネル(川西工事)にも適用し、同高速道路の萱沼トンネル工事、高松トンネル工事への適用も予定しているという。
発破後の余掘り量を把握し、発破パターンを更新
ブラストマスタは、ICTの最新技術を活用した次世代型トンネル構築システム「シミズ・スマート・トンネル」の要素技術の一つ。初適用となった新東名高速道路高取山トンネル西工事では、余掘り量を既存システム比で40%低減することが確認された。
トンネル工事の余掘りは、発破によって生じる計画していた掘削断面以上の空間で、余分な掘削部分を指す。搬出する土砂(ずり)や吹き付けコンクリートの増量に直結するため、余掘り量を低減することは、山岳トンネルの施工管理では常に課題となっている。
新開発のブラストマスタは、余掘り量を計測する車搭載型の3Dスキャナーと、最適な発破パターンを提案するシステムで構成。余掘り量を調整するには、削孔機に入力する“発破パターン”と呼ばれる火薬挿入孔の削孔位置と角度を調整する必要があるため、発破後の余掘り量を3Dスキャナーで把握して発破パターンを修正する。最後の削孔機へのデータ転送までの一連の作業は、全て自動化されている。
具体的な手順としては、まず、過去の経験や地山強度などを勘案し、初期発破パターンを作成する。次に削孔機で、削孔をした火薬挿入孔に火薬を挿入し、発破を行い、その後、3Dスキャナーを搭載した車両を切羽付近に寄せて、空間形状をスキャン。システムが余掘り量を把握し、切羽外周部に位置する挿入孔の位置と角度の最適値を自動で算出し、削孔機に入力されている初期の発破パターンを更新する。
作業員が専用PCでパターンを更新していた際は時間を要していたが、新システムでは、初期パターンの作成から最適化までの所要時間はわずか3分で済む。
開発にあたっては、清水建設が余掘り量の評価に応じて発破パターンを自動更新するシステムの発案と全体概念を検討して、サンドビックがシステムの構築を担当した。
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