多様なビル設備を統合管理するプラットフォーム「Digital Vault」、100以上のプロトコルをコンバージョン:BAS(2/2 ページ)
ジョンソンコントロールズはアメリカ、シンガポール、ヨーロッパ、イスラエルで実証実験を進めるデジタルクラウドプラットフォーム「Digital Vault」の国内展開を視野に入れた。
Microsoft Azure“IoT Hub”で多様なプロトコルに対応
ビルシステムが抱える課題についても言及した。ウン氏は、「現在、ビルシステムのプラットフォームは、施設内の特徴を把握するために、設計・建築段階で得られた情報を踏まえた設備の統合制御機能やデータの一元管理ができることがユーザーに望まれているが、市場には少ない。また、プラットフォームに実装するアプリケーションは、さまざまなビルで収集された膨大なデータに基づき開発されなければならないが、その要件が満たされていないケースが多い」と明かした。
加えて、「エネルギー消費量や設備の現状を視認化するソフトや建造物の利用状況を考慮し、自動で学習と建物の設備のコントロールを実行するAIの需要も高まっている」と続けた。
こういった課題を解消する製品としてデジタルクラウドプラットフォーム「Digital Vault」を解説した。Digital Vaultは組み込むアプリケーションにより、センサーなどの設備から集められるデータのクリーニングとノーマライジングを行い、有益な情報を抽出し、ビルに設置された機器同士の連携や施設の利用状況の分析などに活用できる。
Digital Vaultに搭載できるアプリケーションは、Microsoft Azureと連動することでデジタルツインによる建物のシミュレーション分析が行える上、将来的なエネルギー使用量の予測、施設内の不具合の検知、建物の現状の診断、HVAC(空調冷熱機器)運用の最適化、予知保全を可能にするという。
さらに、クラウドベースのビル設備データ解析プラットフォーム「ジョンソンコントロールズエンタープライズマネジメント(JEM)」やテナント向けファシリティマネジメントシステム「コンパニオン」、集約セキュリティシステム「Connected Converged Security」と連動することで、建物の空きスペースのマネジメントや労働生産性の調査や誤警報の低減も進められる。
ウン氏は、「Digital Vaultは、各設備の使用実態を集積し、そのデータに基づき、自動で高効率なビル運営をする。Microsoft Azure“IoT Hub”を用いることで、100以上のプロトコルのコンバージョンに応じ、それぞれの機器との通信を可能にしている。日本での販売日や具体的な仕様は決定していないが、料金体系はサブスクリプションで、“アズ・アサービス”という名称での展開を予定している」と述べた。
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