“暴走車両“から高速上の作業員を守る、胴体が伸縮する「防護車両」を開発:建設現場の災害防止
中日本ハイウェイ・メンテナンス名古屋は、近年増加している高速道路の路上作業中に、高速で突っ込んで来る車によって引き起こされる事故を防ぐ目的で、作業エリアを車体で覆う特殊な防護車両を開発した。
NEXCO中日本のグループ・中日本ハイウェイ・メンテナンス名古屋は、東邦車輛と共同で、高速道路上で交通規制をして路上作業する作業員の安全を確保するため、特殊車両「大型移動式防護車両」を開発した。
作業スペース10×2メートルをカバー
新開発の大型移動式防護車両は、同社が推進している「i-MOVEMENT」の取り組みの一環で、「工事規制の高度化・省力化」につながる技術という位置付け。規制区域内に誤って進入してきた車から、直接防護できる作業スペースを車体自らが壁となって確保する。
高速道路の路上作業に、通行車両が規制区域内に誤って進入し、工事車両や工事規制器材に衝突する物損事故がここ数年大幅に増加傾向にあるという。場合によっては、作業員に衝突して作業員が負傷さらには死亡に至るケースも発生している。
これまでにもNEXCO中日本グループでは、強制的に車両を止める「とまるぞーII」や衝撃を検知するろエアバッグが膨張する「エアバッグ式安全チョッキ」などの製品を開発してきた。より確実な方法として、作業スペースそのものを囲む、米国などで使われている大型の移動式防護車両を導入することとなった。
しかし、海外の大型防護車両は、日本の道路運送車両法などの法令に適合しないため、現場で運用することができず、今回日本向けに新開発した。
車体ヨコの長さは、車体中央の保護ビームを伸縮させることで、走行時で15.9メートル、作業時には23.4メートルまで伸ばせ、最大10×2メートルの作業スペースを確保することができる。搭載している保護ビームは、左右どちらにでも移動させられるため、走行車線規制や追越車線規制の両方に対応する。
また、車体後部には、衝撃緩衝装置を装備しており、さらにその後方に防護車両を配置することで、万が一通行車両が後方から追突した場合でも作業エリアを2段階で守れる。
中日本ハイウェイ・メンテナンス名古屋では、担当している交通規制を伴うポットホール補修や事故復旧工事などの約4割に適用が見込めるとし、安全性向上や工事規制作業の省力化に期待を寄せている。
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