三菱地所が都内狭小地のオフィスビルに、「ツーバイ材ラミナ」のCLTを初採用:CLT(3/3 ページ)
三菱地所は、東京・千代田区の岩本町で建設を進めているオフィスビルの床材にCLTを導入した。CLTの木材は国産材のスギで、厚さ38ミリのツーバイ材ラミナで構成している。
「鉄骨造+木」の新たな鉄骨梁の耐火被覆を開発
耐火被覆では、ケイカル板が高額だったことや設備配管用の梁(はり)貫通や外装受け部材が設置できなかった問題点を改善。安価な強化石こうボードと、ニチアスの乾式耐火被覆「マキベエ」を組み合わせ、新たな鉄骨梁の耐火被膜を開発した。これにより、既存の仕様に対して、ローコスト化が図れ、鉄骨造と同様の梁貫通や外装受けを設けられるようになった。
CLTパネルの取り付けでは、従来は、鉄筋を現場で配筋するための「溝加工」という事前の加工が必要だった。これを長さ120ミリのラグスクリューボルトをCLTパネルに埋め込み、コンクリートを流し込む新たな簡易接合方法に変えて、接合部の仕様を簡素化したため、CLT床工事費もより低減される。
三菱地所 住宅業務企画部 CLTユニットの担当者は、「当社は、今後の事業継続性を見据え、CLTのR&Dをスタートさせ、さまざまなアセットでのノウハウ蓄積や普及を進めている。単に安いCLTではS造と組み合わせるとき、より手間が掛かかってしまう。今回適用したCLTは、現場でマザーボードを鉄骨のフレームに落とすだけで済む施工簡易性がある。これにより、CLT専用の職人は不要となり、製造から施工までを含めたローコスト化が図れる。現状では鉄骨造よりも、1割ほどコストが割高になってしまうが、将来的には木の表面を露出させる“現し”の天井などにすることなどで、よりコストカットを目指していく」と説明した。
三菱地所では、2016年からCLTに取り組み、現在までに10階建て賃貸マンションの「PARK WOOD高森」、屋根に現しとして使った沖縄県宮古島の「みやこ下地島空港ターミナル」、隈研吾建築都市設計事務所がデザイン監修を手掛け岡山県真庭市のCLT材を用いた「CLT晴海プロジェクト」パビリオン棟の実績がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- CLTで“循環型社会”を実現!隈研吾×三菱地所×真庭市の「CLT 晴海プロジェクト」始動
三菱地所と隈研吾建築都市設計事務所、岡山県真庭市の3者は2019年2月14日、東京・晴海地区で、CLT(Cross Laminated Timber/直交集成板)を用いて、国産材の利用促進と地方創生を目的とした「CLT 晴海プロジェクト」を始動させた。プロジェクトでは、真庭市で伐採されたスギ・ヒノキをCLTに用い、東京五輪開催に合わせたイベント施設を晴海に建設する。2020大会終了後には、生産地・真庭市の国立公園へと施設を移築し、地域のランドマークとして再生させる。 - CLT使用の8階建て事務所建築が千代田区で着工、賃貸オフィスとして
三菱地所は、板の層を積層接着した大型パネルCLTを構造材とする8階建てオフィスビル「千代田区岩本三丁目計画(仮称)」を新築着工したと発表。2020年3月末完工予定。完成後は賃貸オフィスとしての運用を予定している。 - CLTを“床材”に採用した国内初の高層マンションが竣工、床と壁に220m3を導入し工期を3カ月短縮
三菱地所が、宮城県仙台市泉区で建設を進めてきたCLTを床材として採用した国内初の高層マンション「PARK WOOD 高森」が竣工した。完成後は、木材特有の乾燥収縮やクリープによる変形量をモニタリングし、CLTの普及に役立てていくという。 - 国産スギ“CLTパネル”を用いた、スパン9.5×高さ9×奥行き42mの国内最大級建築空間を構築
大成建設は、神奈川県横浜市の技術センターに、CLT構造を用いた国内最大級の建築空間「T-WOOD Space」を構築した。 - BIMを利用して木造建築のCLT材を自動加工する“多関節ロボット”が実用化、恐竜の骨格標本複製で性能実証
前田建設工業は、千葉大学と共同で、BIMを活用して大規模木造建築に使用するCLT材などの構造材を自動加工できる「多関節ロボット加工機」を開発し、自社の新技術研究所「ICIラボ」に配備した。