BIMを利用して木造建築のCLT材を自動加工する“多関節ロボット”が実用化、恐竜の骨格標本複製で性能実証:建設×ロボット
前田建設工業は、千葉大学と共同で、BIMを活用して大規模木造建築に使用するCLT材などの構造材を自動加工できる「多関節ロボット加工機」を開発し、自社の新技術研究所「ICIラボ」に配備した。
前田建設工業は、千葉大学大学院 工学研究科の平沢研究室と共同で、BIM(Building Information Modeling)のデータから、大規模木造建築に使用するCLT(Cross Laminated Timber)材などの構造材を自動加工できる多関節ロボット加工機を開発し、茨城県取手市の「ICIラボ」に設置した。
純国産の先進的木加工機が実用化、BIMを利用したミリング加工も可能
ICIラボに設置されたロボット加工機は、産業用多関節ロボット(ファナック製)2基と専用の搬送台で構成。材料の縦置きによる同時両面加工を実現させたことで、比較的小スペースでの設置が可能となり、CLT材をはじめとする新しい材料の加工に対応する。
このロボットは、先端ツールを交換して、3次元データを用いた彫塑的なミリング加工を行うこともできる。そのため、伝統建築における意匠的な装飾を施した材料なども、ARCHICADなどの建築設計で用いる一般的なBIMモデルをそのまま転用して、一気通貫で自動加工することが可能だ。
ICIラボ内のネスト棟では、加工機でカットした梁(はり)・柱部を構造材に採用している。この加工工程で、高い精度と従来機に勝る加工スピードを確認し、これにより、純国産の先進的木加工機が実用化された。
加工機の設置に取られる面積は、従来機と比較して大幅に縮小し、製造ラインや切削対象物に応じて、ロボットの配置計画を適宜行うことで、自由度の高いライン設計が可能となる。大判CLTなど、従来機では加工するのが難しいとされていた大型の材料も、ロボットの台数を増やすことで可能になるだけなく、加工速度もアップする。
多関節型ロボットを用いた材料の全面同時加工では、精密加工や曲線加工が実現する。細密な木質内装の加工、複雑な型枠の制作、さらに家具什器やアート作品の造形にも、利用することが見込まれる。
実際に、CLT以外の用途として、精密彫刻の性能実証を目的に、恐竜骨格標本の複製製作を福井県立恐竜博物館・福井県立大学恐竜学研究所の監修の下で行っており、成果物は2019年2月のICIラボ開所に合わせて公開するという。
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