ZEH累積棟数で世界No.1、“植栽もスゴイ”【積水ハウス】が考える住宅の「環境戦略」:ZEH(3/3 ページ)
積水ハウスは、2050年の脱炭素を目指し、住宅分野で独自の環境戦略に取り組んでいる。主力となるゼロエネルギー住宅は、2018年度ベースで新築に占めるZEH比率は79%と国内で最多。その基本理念には、単純に省エネの実現だけでなく、顧客のことを考えた住みやすさやデザイン性も考慮し、事業戦略と一体で進め、一時的では無い持続可能性を持った取り組みとすることが掲げられている。
外構造園事業で売上高600億円以上
一風変わった他には無い脱炭素化の取り組みとして石田氏は、2001年から計画が進められていた「5本の樹」を紹介。生物多様性の保全を目的に、庭に5本の樹を植え、止まり木として訪れる野鳥と植物の関係を紹介するオリジナル冊子を作成して、ハード(造園)とソフト(情報提供)の両面でサポートを行っている。
この試みも事業と一体で考えられており、これまでに累計1502万本の植樹を達成し、積水ハウスは外構造園事業で売上高600億円以上に到達した日本一の造園業者という側面も併せ持つ。
企業の自然エネルギー100%を推進する国際ビジネスイニシアティブRE100に対する考えでは、電力事業者はオーナーと積水ハウスの間に入り、ZEHから卒FIT電力を買い取り(買取価格:11円/kWh)、工場・事務所・展示場に事業用電力として供給する。これにより、協力電力会社にとっては取得コストや営業コストが削減されるメリットが生まれる。「卒FIT買い取りの他社との違いは、電力の小売りとセットではないこと。古い契約の方がオーナーに有利に働く場合があるためで、過去に買った人も優遇されるオーナーサポートでなければならない」(石田氏)。
家を建てることの持続可能性につながる廃棄物のゼロエミッションでは、建築資材の100%リサイクルを目指す。新築施工現場では27分別、資源循環センターでは80分別を、QRコードを利用したオリジナルの廃棄物実測システムによって実現していることを紹介し、講演を締めくくった。
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