ZEH累積棟数で世界No.1、“植栽もスゴイ”【積水ハウス】が考える住宅の「環境戦略」:ZEH(2/3 ページ)
積水ハウスは、2050年の脱炭素を目指し、住宅分野で独自の環境戦略に取り組んでいる。主力となるゼロエネルギー住宅は、2018年度ベースで新築に占めるZEH比率は79%と国内で最多。その基本理念には、単純に省エネの実現だけでなく、顧客のことを考えた住みやすさやデザイン性も考慮し、事業戦略と一体で進め、一時的では無い持続可能性を持った取り組みとすることが掲げられている。
デザインの有意性が将来のZEH差別化に
戸建て住宅のブランドGreenFirstは、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を掲げ、2003年から運用をスタートさせた瓦型の太陽光発電を備え、次世代タイプの断熱材やLED照明・高効率エアコン・省エネ節水便座といった設備機器を採用し、残りを燃料電池に回すことで、居住空間のCO2を減らす。
瓦型の屋根について石田氏は、「端から端までぴったりと屋根に収まるのが利点。省エネのためにだけではなく、快適性のための家づくりが基本。ZEHの購入者は、性能よりもデザインを判断基準にして購入するはず。将来、ZEHが義務化されれば、デザインの有意性が他のメーカーとの差別化にもつながる」と解説。
これまでにZEHは、2019年4〜7月の最新実績ベースで85%に対応し、2013〜2019年7月累積棟数では世界1位となる4万7575棟もの棟数を建てている。「曇りの日が連日続いた場合や日本の四季を考えると、太陽光と蓄電池よりも望ましい」とする燃料電池の設置棟数に至っては、5万4756棟(2019年7月時点)。2018年に大阪都市部を襲った台風被害では、850棟のエネファームが昼夜を問わず電力を供給し続け、停電に見舞われた近隣住民も利用することがあったという。
ゼロエネルギーの事業領域は、戸建て住宅だけではなく、賃貸住宅・マンションでの市場創出も見込んでいる。初弾として2019年2月には日本初の全住戸ZEHマンション「グランドメゾン覚王山菊坂町」(RC造・3階建て、12戸)が完成。現在は、全住戸で燃料電池の採用や大開口でもZEHの断熱基準を満たすスーパースペーシア(真空ガラス)を採り入れた36階建ての高層マンションも、2022年11月の竣工予定で計画が進められている。
さらにその先には、まだ他社に比べて実績が少ない、非住宅領域のZEBをも見据える。その先駆けとして、2018年9月には、東北初のZEB「Nearly ZEB」を実現したグループ企業である積和建設東北の本社社屋が完成している。
グローバルでのトレンドをみると、ZEH戦略は世界中で拡大している。とくに米国や豪州では、“住宅は投資対象”との考えから、石田氏は「未来の住宅仕様を先取りしているZEHは、次に売る際、既に標準の基準を満たしているため高く売れ、住んでいる間は健康・快適・安全安心・光熱費削減のメリットを享受できる」と、海外でもZEHが重要なキーワードになっていることを指摘した。
また、積水ハウスの環境戦略の特徴は、事業戦略と一体化されていることにある。ZEHのGreenFirstモデルを販売し始めてから、CO2排出削減率と売上高営業利益率、顧客満足度、さらに戸建て住宅の1棟当たりの平均単価は全て連動して右肩上がりで上昇した。「社会貢献の事業だけでは、世の中が不景気になったとき、コストカットの観点から事業の撤退をしてしまうかもしれない。省エネかつ快適な住まいを提供することによって、住宅に付加価値を与えることになり、戸建て住宅の価格上昇ももたらされる」(石田氏)。
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