大林組は、電線を保護するために、コンクリートに埋設して使用されている「合成樹脂可とう電線管(CD管)」をパイプクーリングに利用し、鋼管を使用した従来工法と比較すると生産性が大幅に向上する「フレックスクーリング工法」を開発した。
自由に曲げられ、軽量かつ高耐久のCD管を採用
コンクリートは、水とセメントの化学反応によって硬化する際に熱が発生するとされる。生コンクリート打設後の数日間は、反応が急速に進むため、多くの熱が発生し、ひび割れが生じることがある。とくに体積が大きい土木構造物となれば、発熱量も大きいため、温度ひび割れの効果的な対策の一つとして、パイプクーリングが用いられている。パイプクーリングは、コンクリート内部に設置したパイプに水を循環させ、コンクリートを冷却することで、温度ひび割れを抑制する工法。
パイプには通常、鋼管を使用するが、曲げや切断の加工には専用の機械を使用する必要があり、配置時に鉄筋と干渉した場合は調整するのが困難という課題があった。また、1本が5.5メートルと短いことから、接続部を多く設けなければならず、漏水対策が不可欠で、1メートル当たり約2.4キロと重いため、施工に労力を要していた。
開発したフレックスクーリング工法は、1メートル当たり約120グラムと軽量なことに加え、1巻き50メートルと長尺で、さらに人力で自由に曲げられる可とう性を有するCD管を採用。CD管は長年コンクリートに埋設されて使用されてきた実績があり、耐久性にも優れる。
大林組が新幹線の橋梁(きょうりょう)コンクリートに適用した結果、鋼管を使用した場合と比べ、加工・配置に関わる作業時間が約70%削減し、全体のコストも約40%カットされることが証明された。
実規模試験と実施工での温度計測結果では、冷却性能が同径の鋼管と同じことに加えて、CD管特有の凹凸形状にもコンクリートや冷却後に埋めたモルタルが、隙間なく充てんでき、コンクリートの強度が低下しないことも確認されている。
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