GLOOBEの確認申請用テンプレ無償提供、BIMで組織を超え標準化を実現した国内初の事例:BIM(3/3 ページ)
福井コンピュータアーキテクトとJ-BIM研究会は、純国産のBIM建築設計システム「GLOOBE 2019」で利用可能な「GLOOBE確認申請テンプレート 2019」と「GLOOBE確認申請テンプレート 2019活用マニュアル」を開発した。
審査機関側の指摘事項を削減し、設計の手戻りを最小化
記者発表会では、日本ERI JCBA指定期間委員会事務局 BIM推進センター長 関戸有里氏は、実案件での技術検証でスターツCAMが作成したBIMデータに対する審査の流れを紹介した。
「前提条件として、全てのデータのやりとりは、クラウドサーバである電子申請受付Webシステムを活用した。まず、設計者のスターツCAMが、GLOOBEで作ったBIMデータとPDF化した確認申請書類一式を審査会社の日本ERIに渡し、仮受付する。図面整合チェックといった審査などを反映した質疑書をスターツCAMに戻す。その質疑書に則し、スターツCAMがBIMデータを直接修正し、日本ERIに送る。日本ERIは、その直したデータを基に審査済み図書をPDFで作り上げ、スターツCAMに返却する。スターツCAMは、その図書に電子署名した後、電子申請し、日本ERIが受け取り、本受付・審査、紙ベースでの消防同意製作を進め、PDFデータで確認済図書を、スターツCAMに送信することで、確認済証交付を完了し、このデータを紙化したものをスターツCAMが受領し、着工に至った」(関戸氏)。
GLOOBE確認申請テンプレート 2019を活用した凡例の効果については、「審査序盤での単体規定の全容が把握しやすかった。関係する法規制と、その法規制に連動した凡例がデフォルトで表記されたことが要因だと考えている。この特徴を生かすことで、設計者側も関連する法規制を意識した図書作成につなげられる。だが、凡例には地域性があり、現状では全てを網羅することは困難だ」とコメントした。
また、「防火区画の位置は、通常なら2Dの平面図のみで確認することになるが、GLOOBEの連動機能で、3Dモデルで凡例と同じケースが見られるため、理解しやすかった」と語った。
さらに、この申請方法の機能面について、「延焼線にかかる開口部で防火設備の仕様でない部分を示す機能は、防火設備漏れを防ぐ。各居室やその採光換気の有効開口部の位置、開口寸法の関係性が分かりやすく表示されるシステムは、通常、何枚もの図面を照合しながら行うことが多い業務を1つの画面で進められるので、審査効率が促進する。いずれの機能も、設計者側が図面作成時や建築確認申請図提出前に、法適合を自己チェックでき、ミスの最小化を後押しする。そのため、審査機関側の指摘事項が減り、設計の手戻りが少なくなることが、最大の利点」と付け加えた。
この他、今後の課題については、BIMモデルは建築基準法上参考資料であることやGLOOBE確認申請テンプレート 2019の凡例は、用途、規模に応じた整理が必要であること、一部紙ベースの情報管理があること、作図者の能力により発生する入力データのばらつきが起きることなどが列挙された。
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