BIMは“デジタルファブリケーション”で工場加工に連動する段階へ、竹中コーポレートレポート2019
竹中工務店は、サステナブル社会の実現を目指す竹中グループの取り組みを紹介する「竹中コーポレートレポート2019」を発行した。
竹中工務店は、サステナブル社会の実現を目指す竹中グループの取り組みを紹介する「竹中コーポレートレポート2019」を発行した。
「国産材」活用推進、生産BIMの拡大、働き方改革の3つに注力
レポートは、竹中グループのグループCSRビジョンを広く示すとともに、グローバルな展開を行う事業活動全体をステークホルダーへの理解を目的に、Webと冊子で発行するもの。
竹中コーポレートレポート2019では、CSRやSDGsに寄与する活動を取り上げ、サステナブル社会の実現に向けた「共通価値課題」に対する取り組みをWeb版と連動しながら分かりやすく解説している。
とくに2019年は、サステナブル社会を目指す象徴的な活動として3点に注力。1つ目は、「日本の木で中高層ビルを木造建築に」を掲げ、国産材の利用を促し、低炭素社会の実現と地方創生につながる「森林グランドサイクル」の実現を目指したまちづくりを進める。
建物をコンクリートや鉄骨から木に置き換える場合は、耐震性能や耐火・防災に関わる法規のクリア、高品質な材料調達など、多くのハードルがある。そのため、2011年に開発した1時間の耐火性能を持つ集成材「燃エンウッド」をはじめ、CLT(直交集成板)の利用などで、都市部に中高層の木造建築を実現している。
2013年の大阪木材仲買会館から、江東区立有明西学園、竹中研修所 匠など、これまでに都市部で10例の大規模木造・木質建築の実績がある。2019年2月には、国内初の10階建て木造ハイブリッド建築「(仮称)泉区高森2丁目プロジェクト」が竣工。さらに、2025年の完成を予定している20階建て、ラテン語で“高い木々”を意味する「Alta Ligna Tower(アルタ・リグナ・タワー)」は、耐火技術、木造技術を集約させた高層木造モデル。日本の厳しい耐震、耐火基準をクリアしながら、欧州と同様の高層木造が実現する。
2つ目は、「設計から生産に至るプロセス全体の生産性を革新する」。将来的な業界の建設技能者の減少への対応やワークライフバランスの向上を図ることが喫緊の課題となる。そのために、設計から生産に至るプロセス全体を変革し、BIM、ICT、AI、ロボティクスなどの最新技術を取り込むことを目指す。
設計・施工一貫体制の強みを生かし、工法や製作図などの「生産情報」を設計に取り込む。一例として、渋谷のパルコ宇田川町複合施設では、設計の初期から周辺の地盤を支える壁や梁(はり)といった山留めの3次元安定解析や解体と新築を合理的に進める新築躯体のレベルを綿密に検討し、設計図に盛り込み、山留めの削減や省人化を図った。
BIMは、これまでの構造と設備との整合を図るだけのフェーズから、設計時点で躯体や製作モデルと連携する段階へと入った。さらに一歩進み、鉄骨の工作や設備配管、軽量鉄骨製下地のプレカットなど、工場加工へ連動した“デジタルファブリケーション”のステージへと進んでいる。2018年からフロントローディングを推し進める「プロダクト部門」を新設して、設計と生産モデルの連携強化を図っている。
実例では、池袋のシネコンでは、詳細設計からプロダクト部と協力会社が参加し、躯体モデルや鉄骨/外装モデルを一体的に作成。今後も、設計と生産BIMの連携による生産性向上を目標としている。
ロボットや機械化施工法の開発では、横浜アリーナに適用した屋根などを移動しながら施工する「トラベリング工法」やナゴヤドームに活用した地上で組み立て持ち上げる「リフトアップ工法」など機械化工法を現場に導入している。ロボット/AIは、ソフトバンクロボティクス、ソフトバンクと共同で、Boston Dynamicsの4足歩行ロボット「SpotMini」の実証実験を進めた他、構造解析AIソフトの開発を進めている。
3つ目の働き方改革では、11項目のワークライフバランス施策を目標に設定し、全社を挙げて、さらには設計事務所や協力会社への理解も求め、ステークホルダーとともに取り組んでいく。また、2017年に完成した大阪本店MISSを皮切りに、2018年に東京本店THI、名古屋支店、技術研究所など各事業所で、ワークプレースへの改修を順次行っている。ICTや生まれ変わったワークプレースで、社員が自発的に生産性の高い働き方に挑戦している。現在は試行段階だが、時差出勤や、女性が働きやすい作業所環境の整備マニュアル、テレワーク、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)による業務の自動化も検討されている。
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