積水ハウスの全工程“一気通貫”CADプラットフォーム、業務別200以上のアプリを開発:IT業務部の挑戦!(4/4 ページ)
積水ハウスは、住宅業界におけるITを活用した働き方の改革の取り組みを進めている。その象徴である2010年からプロジェクトがスタートした「邸情報プロジェクト」は、総額89億円を投じ、社内でこれまでバラバラに運用されていたCADシステムを一元化するだけでなく、開発から、設計、生産、施工、引き渡し、アフターケアまで全工程一気通貫の全社最適化を実現した。この成果として、年間87億円もの継続したコストダウンが達成されたという。
IT活用で設計業務の簡略化を目指す
――今後の構想
上田 現状の設計業務は、かなり負荷が掛かっているので、負担を減らすことが急務だ。社内調査したところ、15年前と5年前で、1人の設計担当者が1棟の住宅で書く図面は2倍になっていることが判明した。住宅性能評価や住宅補助金関係の申請が増加していることと、図面の提出先が煩雑になっていることが紙の量を増やしている要因だ。
住宅設計のプロセスは、まず顧客からヒアリングして、計画設計(プランニング)、実施図面の作成を行う。大抵の設計者はプランニングを自分でやりたがるが、そこから細かい実施図面は、苦痛な作業と感じることが多いという声をよく聞く。その部分は、過去の設計のログを取り、AIやRPAの導入でデータ分析にかけて、自動化できるのではと期待をしている。
前段のプランニングの部分では、住宅は大まかに2種類に分けられ、一つは地方などで顧客の要望をそのまま聞いて作ると似たようなプランになりがちなケース。一方で首都圏や都市部では、法令の規制や土地の形状などで、1棟1棟異なる計画になる傾向が強い。平均的なプランであれば、ミスが無く、コストも適正な図面が求められるため、ITとの相性が良く自動化も考えられるのではないか。
また、これまで意匠性の高い設計は、感性の領域だったこともあり、ITは関与しなかった。社内外で高い評価を受けた設計者には「チーフアーキテクト」の肩書が与えられているが、彼らが手掛けた過去の作品から、どこが他の平均的な設計者の図面と違うのかをいま解析にかけている。類似した案件を受注した際に、提案内容のヒントに生かすことで、まだ経験の浅い設計者のスキルアップにもつなげられるのではないかと次の構想をしている。
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