プレキャスト製造工場で“Bluetooth”を活用した生産管理システム:生産管理
三井住友建設は、プレキャスト(PCa)部材の製造工場で、IoT機器を使って製造ラインの稼働状況および生産実績を可視化する製造管理システム「PATRAC-PM」を開発した。同社では、PCaに関係する計画/製造/物流/施工の各段階で、PATRAC-PMをはじめ、今後開発を予定している工場オートメーションや施工自動化なども含めた統合プラットフォーム「PATRAC」の構築を目指している。
三井住友建設は、超高層マンションに用いるプレキャスト(PCa)部材の製造工場で、IoT機器を使って製造ラインの稼働状況や生産実績を可視化し、製造プロセスを最適化する管理システム「PATRAC-PM(パトラック-ピーエム、Precast Automatic TRACing system-Production Management)」を開発した。既にグループ会社のSMCプレコンクリート茨城工場に導入したという。
1秒間隔、誤差50センチで作業時間や移動履歴を自動収集
製造管理システム「PATRAC-PM」は、Bluetoothをベースにした電波の到達角度による測位技術「Quuppa Intelligent Locating System」を利用している。工場建屋の天井にはLocator、測位対象(人、クレーンなど)にはBLE(Bluetooth Low Energy)タグを取り付け、全作業工程で部材ごとの作業時間や作業員ごとの移動履歴などを1秒間隔かつ誤差50センチ程度で高精度に自動収集する。
収集された生産データはPCa部材の完成後、独自開発したBIツール(ビジネスインテリジェンスツール)によって自動集計され、作業時間を示すグラフや作業員の動きを表すヒートマップがPCの画面に表示されるとともに、生産実績として蓄積されていく。これにより、工場全体のマクロな生産状況から、一作業のミクロな状況までを簡単に評価し、見直しや改善につなげることが可能になる。
日々の生産実績を数値化/グラフ化することで、作業の効率化、労務の平準化および生産性向上を検討するための各種分析が容易に行える。製造日時、製造ライン、製造ベッド、部材種別、個別の作業員など、生産品質に影響を与える要素別に、製造に要した時間などを絞り込み、改善が可能なポイントの抽出に役立てられる。
三井住友建設には、グループ会社を含め、全国にPCa部材の製造工場が5拠点あり、高品質化と生産性向上が求められている。2018年12月に発表した出荷工程管理システム「PATRAC-DL」や今回のPATRAC-PMから成る次世代PCa生産管理システム「PATRAC」の開発に注力し、次の段階としてPCa製造工場のオートメーション化やPCa部材の自動化施工の実現を目指すとしている。
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