“コワーキングオフィス”の開設面積2017-18年で過去17年間超え、2020年はオフィスビル大量供給で発展期へ:CBREが都内の“コワーキングオフィス”を独自調査(2/3 ページ)
事業用不動産サービス・投資企業のCBREは、ここ数年都内の賃貸オフィスビルで増加している共働ワークスタイルのオフィス「コワーキングオフィス」にスポットを当てたメディアセミナーを開催した。コワーキングオフィスを新たな働き方のプラットフォームと位置付け、現状と今後の見通しについて解説した。
コワーキングオフィスは起業数の増加と連動
転換点となった2010年は、それまでの資本金1円を認める「中小企業挑戦支援法」や最低資本金制度撤廃の「会社法施行」を受け、起業数がリーマン・ショック後に初めて増加へと転じた年。即時に低コストでビジネスを始められるオフィス需要が、この年を端緒に求められるようになった。
他の増加を後押しした要因としては、ビルオーナー側の高空き室率のリーシング戦略、リモートワークの必要性、労働力不足による生産性向上の一手段など、社会課題の解決との関係性が挙げられる。
次にエリアごとの分析では、立地と規模から各エリアの特色を探った。
高セキュリティが求められる業種の多いエリアでは割合が低め
エリア分析すると、市場が最も大きいのは「丸の内・大手町」。次に「六本木・赤坂」「渋谷・恵比寿」と続く。賃貸オフィス市場に対する割合では、「城西」「渋谷・恵比寿」「六本木・赤坂」「丸の内・大手町」の順。IT、金融(フィンテック)、スタートアップ企業の集積地を中心に浸透が進んでいる。
一方、「神田・飯田橋」「新宿」「品川・田町」は賃貸オフィスに占める割合は相対的に低く、弁護士事務所や保険会社など、高セキュリティが求められる業種が集積するエリアのため、セキュリティ面で不安要素のあるコワーキングオフィスは嫌煙されているとみられる。また、一般に大手メーカーが集まる場所でも、コワーキングオフィス開設の割合は低めの傾向にある。
拠点数は、「城西」「渋谷・恵比寿」「神田・飯田橋」「八重洲・日本橋」「六本木・赤坂」の順番で多い。城西は50坪未満の小規模なタイプで、地域密着型の小規模企業や個人の利用が目立つ。交通事情が良くないため、移動負担軽減のためのサテライトオフィスやタッチダウンオフィスとしての需要も厚い。特色として、保育施設を併設したタイプも多く、子育て世代の就労負担を軽減するサービスが付加された形態も広がりつつある。
渋谷・恵比寿エリアは、面積帯も小規模から大規模まで幅広い。スタートアップからそこから成長した企業まで幅広い受け皿があり、エリアへのこだわりが強い需要層に支えられている。
丸の内・大手町は拠点数は少ないが、高い水準のサービスが付与された大型物件が占め、一定規模以上の企業へも訴求している。
全346拠点のコワーキングオフィスのうち、80%にあたる276拠点がグレードB未満のオフィスビル、または業務以外(ホテル、住宅、物流施設、公的施設)に入居。築年数が経過したビルに入るケースも多く、利用者はガレージのようなヴィンテージ感を好み、あえて古いビルを選択していることもある。
一方でリスク面を考察すると、築年数が経過していることから、ビル建て替えのため、入居中のコワーキングオフィスも閉鎖され、利用者にとっては自分の意思とは関係なくコミュニティーが消失してしまうこともある。また、企業による利用では、耐震基準をクリアしていないビルに入居することは、従業員の安全面から難しいとされるが、グレードの高いタイプはまだ絶対数が少ないため、現時点では選択肢の幅は狭くそれほどない。
セミナー後半では、経済情勢を踏まえた今後のコワーキングオフィスの見通しが解説された。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.