“コワーキングオフィス”の開設面積2017-18年で過去17年間超え、2020年はオフィスビル大量供給で発展期へ:CBREが都内の“コワーキングオフィス”を独自調査(3/3 ページ)
事業用不動産サービス・投資企業のCBREは、ここ数年都内の賃貸オフィスビルで増加している共働ワークスタイルのオフィス「コワーキングオフィス」にスポットを当てたメディアセミナーを開催した。コワーキングオフィスを新たな働き方のプラットフォームと位置付け、現状と今後の見通しについて解説した。
コワーキングオフィスは黎明期、普及期を越えて、発展期へ
コワーキングオフィスのメリットと想定されるリスクでは、利用者にとってはコストが抑制できることや組織外のカルチャーに触れられることが、利点としてある。コストは、利用料を坪単価に引き直してみると、ランニングコストは一般のオフィス賃料を下回る。入居時にも内装工事や通信工事が無く、退去時の原状回復が原則不要なことなど、入退去時のコスト面でのメリットも大きい。リスクとしては、Wi-Fi共有やPC・資料ののぞき見といったセキュリティ面での不安、取引先企業の理解、会話やイベントで集中できないといったことがある。
オーナーが自己管理の場合は、ランニングの収入が見込める、一般賃貸オフィスよりも事業が成立しやすい、館内テナントのリテンションにつながるといったメリットがある。課題点は、初期投資に加え、メンテナンス費がかかることをはじめ、利用者のコントロールなどのオペレーションの難易度が高いといったことが予想される。だが、小規模テナントを多く抱えるオペレーションを委託という形にすれば、エンドユーザーと直接やり取りするよりも、負担軽減かつオペレーションは容易になる。
今後の動向分析では、2019年に予定されている消費税増税は、2014年に引き上げられた際には個人消費は落ち込んだものの、起業数は増加したため、影響は少ないと見る。当面は経済も底堅い成長が続く見通しで、需要増に従ってコワーキングオフィスも増えていく予測が示された。しかし、市場拡大により、小規模なタイプは淘汰される可能性もある。
現在のオフィス空き室率は調査開始以来、最も低水準。ビルオーナーが空き室消化のために積極誘致する環境にはない。2020年には、東京でオフィスビルの大量供給を控えているため、需給バランスが緩む懸念がある。これからの新規供給ビルは、グレードの高いコワーキングオフィスが入居するケースが増えるとした。
社会情勢として、生産年齢人口は減少フェーズに入り、労働力不足はいよいよ深刻になりつつある。人材のつなぎ止めや雇用獲得のためのリモートワークや生産性向上の一手段として、活用が広まることが期待される。
他に、2019年からは不動産の賃貸借契約は、資産計上される方向で変更されるが、コワーキングオフィスは従来通り経費として計上が認められる。オフバランスのために一つの選択肢として浮上することも考えられる。
全体としては、今後も増加する要因は多く、市場規模の拡大は続く。大企業にも利用が広がれば、従来のオフィスの在り方に変化をもたらす可能性がある。
ルホン氏は、「ここ最近は、働き方改革やテレワーク・デイ開始に伴い、大企業が利用し始め、需要を喚起した。今後は、職場環境のみならず賃貸借契約についても柔軟性がますます求められるようになっていることに加え、会計基準の変更なども背景にして、コワーキングオフィスの市場は拡大が続いていく」と予測した。
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