BIMで広がる建設業界の可能性と現在地:BIMで変わる建設業の未来(1)(2/3 ページ)
ICT、ロボット、ドローン。こうした新しい技術がさまざまな産業に変化をもたらす中、建設業界でもその活用に注目が集まっている。本連載ではBIMを筆頭に、建設業界に関連する最新技術の活用状況の現在と、今後の展望について解説していく。
見え始めたテクノロジーの活用の兆し
こうしたテクノロジーの革新は、建設業界で起きているわけではない。というよりも、他の業界の先進的な取り組みが建設業界で活用されはじめている、というのが事実だろう。例えば、映画やゲームの世界では、3Dでコンテンツを作成することはもはや当たり前であり、さまざまなシミュレーションやコラボレーションといった新しいモノづくりの手法が日々生み出されている。自動車や船舶業界などの業界では、3Dで作成したバーチャルプロトタイプを、アディティブマニュファクチャリング(積層造形)で具現化するといった手法も活用され始めている。
建設業界でもこうしたテクノロジーの活用の兆しが見えてきている。建物は3Dのモデルとして設計され、建物の施工、運用管理情報がデータベースとして構築されている。さらに光、熱、風、避難経路や交通の動線などを、初期の段階で簡単にシミュレーションしたいといったニーズも増えてきている。施工においても、工場で製作されたプレファブ部材をオンサイトで組み立てるといった建設現場のファブリケーション化も進みつつある。これはまさに映画やゲーム業界、製造業で起きている技術革新を建設業界へ応用していると言っていいだろう。ICTを通して、さまざまな業界のニーズは共通化し始めている。
とはいえ、建設業界のICTの活用はまだまだ発展の余地があるだろう。米MacKinsey社が2016年にまとめた「Imagining Construction’s Digital Future」(建設業界のデジタル未来を想像する)というレポートによると、建設業界のデジタル化の進展具合は、農耕・狩猟業に続いてワースト2位である。
このレポートは22の各業界についてデジタルな資産、利用状況、そして人材という観点で27の項目で分析している。ICT業界、メディア業界が上位にランクインするというのは比較的イメージしやすい。しかし不動産、教育、医療など、一見デジタル活用というイメージからは遠く見える業界にも後れをとっているのが建設業界の実情といえるだろう。
もちろん先述したように、建設業界のさまざまな場面でICTは活用され始めている。しかしこのレポートが示すように建設業界がデジタル活用で「後れている」とされているのはなぜか。その原因の1つとして、ICTの活用方法が「単に従来のやり方を部分的にICTに置き換えているだけである」という点が挙げられるのではないだろうか。
例えば、手書きの時代からCADの時代になり、図面の書き方はドラフトテーブルからPCとプリンタへと置き換わった。しかしそれはあくまでも従来通りの「紙の図面」が成果物となっていて、設計の手法やコミュニケーション方法が変わったとはいえないだろう。そこに新しいビジネスが生まれているとも言い難い。
施工の現場では、コンピュータやロボット、モバイル機器を活用した手法が取り入れられているとはいえ、建設に必要な情報、日々発生する情報をデータとして蓄積し活用する、といった状況にはまだ至っていない。建物の運用管理の現場ではさらに後れをとっている。建物の情報を活用し、ICTで施設を効率的に管理するといった段階は、まだこれからだろう。
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