BIMで広がる建設業界の可能性と現在地:BIMで変わる建設業の未来(1)(3/3 ページ)
ICT、ロボット、ドローン。こうした新しい技術がさまざまな産業に変化をもたらす中、建設業界でもその活用に注目が集まっている。本連載ではBIMを筆頭に、建設業界に関連する最新技術の活用状況の現在と、今後の展望について解説していく。
必要なのは全体最適化の視点
ICTの活用で大事なのは全体のプロセスを最適化するという視点だ。例えば、BIMを用いる際に従来通りの設計図面をモデルから作成する、という視点に陥ってしまうと、全く前に進めなくなってしまう。そもそも図面は、3Dという情報を2Dとしてデータ量を落とした表現方法であり、単純にモデルを切り出したら出来上がるというものではないからだ。
それよりも、設計時点で、施工や運用を視野に入れて、何を3Dとしてモデリングするのか、何は従来通りの2Dの表現でいいのか、どういった情報が必要か、あるいは不要か、というプロセス全体の見直しをする必要がある。そしてBIMをフルに活用するためには、3Dのモデリングデータと属性情報をセットで管理し、より高いレベルのデータを維持したまま、プロジェクトに携わるステークホルダー同士でコミュニケーションを行っていく必要がある。これは単に1つの企業だけで取り組むことは難しく、業界全体として、さまざまなステークホルダーが関係したコンソーシアムのような考え方も必要かもしれない。
また、ICTの活用は、単に効率化を追求するだけでなく、新しいビジネスの創生であるべきだ。例えばAmazonは1994年にアメリカで生まれた企業である。インターネットでの書籍販売などを展開し、業界や規制などの大きなハードルを乗り越えて、現在ではeコマースの代表的な企業に成長している。さらにはドローンなどを活用した新しい物流のスタイルまでビジネスを拡張しようとしている。
Uberは2009年に設立されたばかりの企業だが、スマートフォンアプリを活用した自動車配車サービスを展開し成功している。既存のタクシー業界の猛反対を受ける中、さらにはレストランのメニューをデリバリーするサービスや自動運転による移動手段までもビジネスとして捉えている。こうした企業は、従来の手法をICTで置き換えるという発想ではなく、ICTを活用して新しいビジネスを生み出すために異業種へと参画しているのだ。
後れているとされている建設業界についても、他の業界と同じようにまだまだICT活用の面で成長できる可能性を十分に秘めている。既存の枠にとらわれず、設計から施工、運用管理まで全体的に捉えた最適化を目指すことで、新しいビジネスチャンスを手にできる可能性もある。次回以降はより具体的に建設業界に関連するBIMや他のさまざまな最新テクノロジーについて解説・紹介してく予定だ。
著者プロフィール
濱地和雄(はまじ かずお)オートデスク株式会社 WWSS AECセールスディベロップメントエグゼクティブ
オートデスクジャパンのAECセールスディベロップメントエグゼクティブ (SDE) である濱地和雄は、建築業界に対する長期的なビジョンを作り上げ、インダストリーリーダーを探訪することでBIMマンデートをドライブ。設計事務所や建設会社、教育研究機関、業界団体など幅広いソースから得た、充実したテクニカル、ビジネス、事業アイディアを促進することで高い評価を得ています。濱地はニューヨーク大学で建築学および都市設計の学士号を得ており、SDEの責務にないときは映画を鑑賞し、東京都内で家族と過ごしています。
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