既存建物が迎える改修の時代 建物価値を高める「資産戦略」【新連載】:日本オーチスが示すスマートビルへのロードマップ(1)(1/2 ページ)
今回から、日本オーチス・エレベータによるビル設備の高度化についての新連載がスタート。第1回は、建物の「保守」から「改修」へのパラダイムシフトについて解説する。建て替えではなく、既存建物を戦略的に改修し、資産価値や競争力を向上させるためのアプローチを解説する。
都市化や経済成長が進んだ時代に建てられた建物の多くは、構造そのものは今後も十分に活用できます。しかし、その内部にある設備や機能については、将来を見据えた更新が必要になっています。
また、建物の長寿命化が進む一方で、安全に関する法規制やアクセシビリティー(利便性)への期待、省エネルギー性能への要求、さらには建物の用途や運用方法も変化しています。こうした変化を背景に、既存建物の価値や機能を将来にわたって維持や向上をさせる方法が、改めて問われています。
このことは日本だけの課題ではありません。成熟した建築ストックを抱える国々に共通する、今後を左右する重要なテーマとなっています。
国際エネルギー機関(IEA)は、先進国で2050年に存在する建物の約80%が、既に建設済みと推計しています。これからは新しい建物を建てるだけでなく、既存建物を如何に効果的に再生し、多様化するニーズに適応できるかが重要になります。
日本は、この変化が最も顕著に表れている国の一つです。社会や人々の期待が変化する中、既存建物を再生し続けることは、人々の暮らしや仕事、医療、地域社会とのつながりを支える上で、ますます重要になっています。
長寿命化が進む日本の建物
戦後の経済成長は日本の都市を大きく発展させ、オフィスビルや住宅、商業施設、交通インフラなど、何世代にもわたって人々の暮らしや経済活動を支える数多くの建物を生み出しました。
その多くの建物は、今後も十分に活用することができます。しかし、建設時と比べると、取り巻く環境は大きく様変わりしています。
建物の用途や人口の構成も変容し、それに伴い顧客の期待は多岐にわたるようになっています。一方で、建物を全面的に建て替えるには多額の費用と長い時間が必要となるため、多くの場合は現実的な選択肢とはいえません。
そのため、今問われているのは「古い建物を建て替えるべきか」ではありません。重要なのは、既存建物を戦略的に改修し、変化する社会や利用者のニーズに対応しながら、その価値と機能を次の時代へ引き継いでいくことです。
このような考え方は、日本でも広がりつつあります。国土交通省は、既存建物の有効活用を重視しています。『既存建築物の緩和措置に関する解説集』や『既存建築物の現況調査ガイドライン』を作成し、改修や既存建物の再利用を促すガイドラインの整備などを進めています。
改修が単なる老朽設備の更新や故障対応ではなく、建物の価値を維持/向上させるための重要な経営/運用の戦略へと変わりつつあることを示しています。
保守から改修へ
保守と改修の違いを理解することは重要です。
保守の目的は、設備を正常に動かし続けることです。一方の改修では、設備が利用者や建物運営者のニーズに応えられているかを見直し、必要に応じて機能や性能を向上させます。
建物そのものは十分に使える状態であっても、内部の設備は年月とともに古くなっていきます。エレベーターやエスカレーター、空調設備、電気設備、入退室管理システム、防災設備などには、それぞれ更新のタイミングがあり、建物本体の寿命と必ずしも一致するわけではありません。
例えば、数十年前に設置されたエレベーターが今も稼働していたとしても、現在の建物に求められる信頼性やアクセシビリティー、省エネルギー性能、快適性、運用機能を十分に満たしているとは限りません。こうした状況は、エレベーターだけでなく、建物内のさまざまな設備にも当てはまります。
だからこそ、改修は単なる設備の更新ではありません。建物の価値を維持し、変化するニーズに対応しながら長く活用していく、重要な「資産戦略」として捉える必要があるのです。
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