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建設業崩壊の「X-day」を回避せよ! 建設DX研究所の4つの政策提言建設DX研究所と探る「建設DX最前線」(13)

建設DXの推進を目的に建設テック企業が中心となり、2023年1月に発足した任意団体「建設DX研究所」。現場におけるDXの実装を加速させるためには、技術の導入だけでなく、長年建設業を縛ってきた法規制や行政手続といった制度面の改革が不可欠です。今回は、建設DX研究所の活動のうち、政策提言活動に焦点を当て、各所で展開している最新の政策提言について、その主要な内容をご紹介します。

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深刻な人手不足と建設DXの必要性

 日本の建設業界は極めて深刻な構造的危機に直面しています。中小建設事業者は日本の建設事業者の99.5%を占めていますが、人手不足や従事者の高齢化は既に限界点に達しつつあります。

 今後さらに減少が加速すれば、近い将来、維持管理や災害復旧を担う人材そのものが確保できず、地域の建設業が機能不全に陥る日が到来してしまいます。建設DX研究所ではそれを「X-day」と呼び、重大な課題として受け止めています。現状でも、人件費や資材価格の高騰による工事費の増大と、それに伴う入札不調や工事の中断が顕在化しており、国民の生命や財産を守る社会資本の整備や維持管理が立ち行かなくなる局面は、すぐそこまで迫っています。

 こうした構造的危機を回避するための有効な手段は、デジタル技術を用いた徹底的な効率化です。もはや建設DXは、単なる「生産性向上のための手段」ではありません。「日本の社会資本そのものを存続させるための不可欠な基盤」として捉えるべき段階に入っています。

建設DX研究所が考える、人手不足で建設業が機能不全に陥る「X-day」。解決策となる建設DX技術は、いずれ施工単価よりも割安となる
建設DX研究所が考える、人手不足で建設業が機能不全に陥る「X-day」。解決策となる建設DX技術は、いずれ施工単価よりも割安となる 提供:建設DX研究所

建設DXを加速させる4つの提案

 建設DXの必要性が高まる一方で、実際の建設現場、特に中小建設事業者では、依然としてアナログな規制など、DXを進める上でのボトルネックが多く存在しており、DXの効果が十分に行き渡っていません。

 本提言では、建設DXの推進において解決すべき重要課題を4つの領域に整理し、それぞれの役割に応じた具体的なアプローチを提示しています。

建設DX研究所の4つの政策提言
建設DX研究所の4つの政策提言 提供:建設DX研究所

1:建設現場における建設DXのさらなる加速

 建設現場、特に中小建設事業者ではアナログ規制への対応が残されており、DXの効果が十分に行き渡っていません。将来にわたって持続可能な施工体制を確保するためには、移動時間削減につながる遠隔巡視や遠隔管理を含め、特に生産性向上の効果が高い新技術の導入・定着を現場の実情に即した形で図っていく必要があります。

 そこで、労働安全衛生法に定められる「巡視」を遠隔で実施する際の考え方や、建設業法における技術者などの兼任可能な現場の要件については、一律/画一的な基準ではなく、技術の活用状況や現場の実態を踏まえて更なる基準緩和を推進すべきとしています。

 また、広く中小建設事業者の生産性向上を目的とした建設DXの社会実装のための助成/実証事業制度などを新たに創設すること、再委託先も含む公共工事での新技術の導入において、工期短縮、人手削減、将来的な維持管理コストの低減などを含めた総合的な価値に基づき評価/採用できるように判断基準を整備することなども求めています。

2:行政手続における建設DXのさらなる加速

 建設行政における書類や手続は依然として多様かつアナログで、特に中小建設事業者にとって大きな事務負担となっています。AIを前提とした行政データの利活用でも、行政手続の簡素化、統一化、電子化、データのオープン化を一体的に推進することが急務です。 そのため、特に地方自治体が取り扱う建設関連書類について、全国統一化/簡素化を進めるとともに、主要な建設行政手続でいまだ限定的な電子化を引き続き推進すべきとしています。

 また、建築確認申請など、建設業務において日常的に参照される行政保有データは、実務上の利用可能性を明確化した上で、機械判読可能な形式でのインターネット上の公開を進めるべきとしています。

3:持続可能な建設業のための建設DXの推進

 建設分野のDXは、人手不足への対応や生産性向上といったこれまで指摘してきた課題への対応にとどまらず、カーボンニュートラルの実現など、持続可能な社会の基盤を支える観点から不可欠です。そのため、BIMなどのデジタルデータの活用、建築分野のGHG排出量削減取組も併せて推進すべきとしています。

 また、近年はAI技術の進展により、設計・施工管理・安全管理・維持管理など建設業の各領域でAI活用の可能性が広がっています。建設分野でも質の高いAIを開発/実装するためには、その基盤となる良質な学習データの確保が急務です。政府が掲げる「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」の実現に向け、モデル工事によるAI活用の試行など、産業全体でデータ連携を可能とする環境整備を後押しすべきと提言しています。

4:災害対応・インフラ維持管理における建設DXの推進

 建設現場の人手不足が深刻化する中、災害発生時の迅速な対応体制の整備は喫緊の課題です。新技術の活用が平時で十分に評価/予算化されていない場合、災害時の迅速な活用も困難となることから、平時からのあらゆる場面でのデジタル技術の活用及びそのための環境整備が必要不可欠だとしています。

 また、全国的に老朽化が進むインフラの維持管理でも、従来の人手に依存した手法から、IoTや新技術の活用への転換が求められています。持続可能なインフラ管理に向けては、新技術(例:ドローン、ロボット、AI、IoTセンサー)を前提とした点検/調査体制の整備による予防保全型の維持管理が必要です。地方自治体によるインフラ管理への新技術の積極的な活用を推進するため、下水道などの調査困難箇所に特化した新技術導入、広域的な維持管理データの蓄積/分析による予防保全型管理を進めるとともに、発注者向けの技術カタログについても高度化などの取り組みを推進すべきと提言しています。

持続可能な建設業の未来に向けて

 建設DX研究所では、これまで継続的に政策提言を行ってきましたが、依然として残るアナログ規制の壁を越え、実質的な建設現場のデジタルシフトを図るためには、さらなる政策の加速が必要です。

 私たちは、単に技術を導入するだけでは解決できない制度的な障壁をクリアすることで、建設業が「地域の守り手」として持続可能な形で機能し続けられる環境を構築したいと考えています。これからも建設DX研究所は、長期的な視野に基づき、建設DX推進に向けた政策提言活動を継続していきます。

著者Profile

増井 琴羽/Kotoha Masui

アンドパッド 経営推進本部 GR(ガバメント・リレーションズ)室。

大学卒業後、農林水産省 林野庁に入庁。国産材活用促進政策、国有林の管理、木材資源政策等に従事。林野庁在職中には業務改革の研究発表で林野庁長官賞を受賞。2024年よりアンドパッドにて公共政策等を担当。

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