検索
ニュース

不夜城と呼ばれた千葉の地場ゼネコンが「ニコニコ帰れる日」を実現するまで 建設DX15年の道のり地場ゼネコンのDX(4/5 ページ)

千葉県成田市に本社を置く地場ゼネコンの平山建設は、2011年のGmail導入以降、約15年にわたりデジタル技術の活用による業務改革を進めて来た。工事部の平均残業時間は月40時間超から26時間へ減少した一方で、平均年収を170万円以上引き上げた。平山建設 代表取締役社長 平山秀樹氏らに業務改革の歩みを聞いた。

Share
Tweet
LINE
Hatena

専門知識ゼロからAIを相棒に担当範囲を拡大

 2026年、平山建設は部門横断のAI活用チーム「Claude Team侍7人」を立ち上げた。総務、購買、企画営業、工事、経営層などから選ばれた7人が、それぞれの業務課題に生成AIを活用しながら業務の自動化やアプリ開発を進めている。

 象徴的なのが、購買課で建設コスト予測モデルを構築した社員の事例だ。パート社員として入社し、ITや建築の専門的な経験はなかった。それでもAIを使いながら、自社が施工したRC造賃貸マンションなど約50件の実績データを分析し、誤差±7%のコスト予測モデルを構築した。こうした成果が評価され、現在は正社員に登用されている。

 もっとも、AIによって専門知識そのものが不要になったわけではない。予測結果が妥当かを判断し、実際の業務に使うには建築や積算に関する知識が欠かせない。だが、専門的な経験がない社員でも、意欲さえあればAIを相棒に自身の担当範囲を広げていける。

 総務部では勤怠管理アプリを刷新し、1件当たりの申請対応時間を15分から2分に短縮した。工事部では月間工程表を基に、日別の搬入スケジュールを生成する仕組みを開発。企画営業部では、敷地情報から建物のボリュームを検討する業務にAIを取り入れている。

 日常的な文章作成や情報整理にもAIが広がっている。自社とグループ会社の社員を対象に2026年5月に実施したアンケートでは、回答者58人のうち52%がAIを「ほぼ毎日」利用。週1回以上利用する社員は83%に達した。AIによる業務時間の短縮を実感しているとの回答も93%に上った。

 主な用途は、メールの作成/添削/返信、議事録の要約/整理、書類の作成/校正、SNSへの投稿などだ。文章作成を入り口にAIを使い始め、次の段階として業務の自動化やアプリ開発へ進む社員も現れている。

DXを支えた自主独立の社風

 専門的なIT教育を受けていない社員が、自ら業務改善の仕組みやアプリをつくる。平山建設でこうした動きが生まれた背景には、ツールや研修だけでなく、社員の自主性を重んじる組織風土がある。会社が仕事の進め方を細かく指示するのではなく、社員自身が目標を決め、任された仕事に責任を持つ「自主独立」の考え方を重視してきた。

 まずは平山氏自身が率先してBIMマネージャーの資格を取得し、生成AIなどの最新技術を使ったシステムの開発などに取り組む姿勢を勢を示した。その姿に触発されて、土屋氏や鈴木氏らも「自分もやるしかない」と自らBIM活用などに手を挙げたという。さらに、BIMを利用したい社員には高性能PCを用意。Claudeを使ったアプリ開発や仕組み化に取り組むメンバーには通常業務で使用する環境と切り分けて試せるように専用のノートPCを配布し、意図しない挙動を起こしても業務に影響が出ない体制を整えている。


専務取締役 工事DX本部長 土屋剛氏

 社風の改善そのものにも取り組んできた。土屋氏が座長を務める「PEP推進委員会」では、周囲を応援する習慣を根付かせることをテーマに、外部のコンサルタントも交えて活動を推進。一人の社員による業務改善が、他の社員の負担軽減にもつながるという意識を共有している。

 土屋氏は「社風の改善とDXは別々に進んできたように見えるが根底は同じだと考えている。抽象的になりがちな経営理念を自分ごと化できるように立場や役職に応じて『自分ならどう具体的に行動するか』を個人目標として落とし込み、振り返る取り組みも継続している。自分の取り組みで周囲の仕事が楽になるのであれば手を動かす。そうした意識が、社員によるAI活用を支えている」と述べた。

 一方で、平山氏は「仕事が忙しく給与も十分ではない状態で、創業以来の理念を説いても社員には響かない。理念を浸透させるには働く環境や待遇という経済的な裏付けが必要だ」という。

 平山建設ではDXによって残業時間を削減しつつ、社員の給与を引き上げてきた。働く環境と待遇を改善した上で社員に会社への貢献を求めることで、DXが押し付けられた活動ではなく、自分たちの仕事を劇的に改善する取り組みとして受け入れられている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る