地場コンの現場監督によるボトムアップ型DX、成功の第1歩は「仲間づくり」から:地場ゼネコンのDX(1/3 ページ)
建設DXを全社展開するには現場にどう根付かせるという視点が欠かせない。加和太建設は、若手社員の主体性を引き出す人材育成や失敗を許容する組織文化で定着を図ってきた。
加和太建設がICT施工や3Dデータ活用を進めるために注力してきたのが、デジタル技術を現場に根付かせるための組織づくりだ。後編では、現場監督でありながら社内のDXを推進してきた土木部 Director 重田一氏に、デジタル技術を形骸化させずに組織へ浸透させる人材育成の手法と、挑戦を肯定する組織風土づくりについて聞いた。さらに「1社だけ頑張っても業界は変わらない」という危機感から生まれた地方建設業とスタートアップとの共創コミュニティーの取り組みも紹介する。
「10しか教えない」 若手の自走力を引き出す育成方法
現場に技術を導入するだけでは建設DXは進まない。どれほど優れた技術やツールでも、業務で日々使われなければ宝の持ち腐れになってしまう。社内のICT化を推進してきた重田氏が注力してきたのは、技術を現場へ浸透させるためのDX推進室(現ICT推進グループ)外での「仲間づくり」と人材育成だった。
まず、土木部約50人の技術者のうち、新しい技術に関心を持つ若手を巻き込んだ。その際に重田氏が徹底したのは、まず本人が何をしたいのかを聞き出し、どうすれば実現できるのか問いを投げかけ、自分で調べさせることだ。
重田氏によると「100あるうち、説明するのは10程度にとどめる。最初から答えを与えすぎると『やらされ感』につながって本人のやる気を削いでしまう」という。
一歩引いて成長を見守ることで若手の主体性を引き出し、自ら試行錯誤しながら技術への理解を深めてもらうことが狙いだ。最近では重田氏がSNSなどで見つけた新技術を共有すると、若手が自ら製品を調べ、活用方法を検討する動きも生まれている。
象徴的な事例が、2025年11月に三島市発注の下水道工事で試験導入したKB-eyeの「AI警備システム」だ。前年に重田氏が市に提案した際は導入が見送られたものの、若手社員が自発的に「やりたい」と声を上げ、市を巻き込んだ勉強会を企画。技術への理解を深めてもらう働きかけが実を結び、1年越しに公共工事での導入が決定した。
重田氏は「『あとは任せる』と言ったら本人が全部やってくれた」と振り返る。現場で成果が見え始めると、周囲の技術者も関心を示す。知識の共有や横展開が進み、新たな挑戦につながる好循環が生まれている。
ただし、若手のデジタル技術活用を後押しする一方で、重田氏には技術者として譲れない軸がある。「デジタル技術に『使われる』側になってはいけない」ということだ。
重田氏は「デジタル技術を使いこなせる力は大きな武器になるが、土木技術者として最も重要なのは、土木の知識と経験に裏打ちされた現場対応力だ。現場に出て、図面と実際の構造物を照らし合わせながら『何か違う』と直感で気付ける感覚は現場を見ることでしか養われない。まずは技術者としての基礎をしっかり固めてほしい」と次世代への期待を込める。
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