静岡三島の地場コンが実践する「ベストミックス」の現場DX 本当に使える技術を見極めるには:地場ゼネコンのDX(2/4 ページ)
静岡県三島市に本社を置く地場ゼネコン加和太建設では、現場の負担軽減からDXに着手し、現在は全現場で3D設計を展開するなど着実にデジタル技術を組織に根付かせてきた。加和太建設の強みは、複数のシステムを工程ごとに使い分ける「ベストミックス」の思想と、若手目線による「現場で本当に使えるか」の徹底検証、そして伴走型の定着支援だ。現場起点での3D点群データを活用した降雨/運搬シミュレーションは「中部DX大賞」を受賞し、工事成績評定の向上や残業削減の成果を上げている。
「若手が良いと言わなければ採用しない」 200サービスのリストから見極める
加和太建設が技術選定で最も重視するのが「現場で本当に使えるか」だ。基準となるのは、ベテランではなく実際に運用を支援するICT推進グループの若手社員の評価だという。
ICT推進グループのメンバーのうち2人は、土木や建築を専門的に学んだ経験のない若手社員だ。だが役割は事務的な後方支援にとどまらない。以前は各現場が個別に行っていた3D設計データの作成を集約し、内製化を実現。さらに施工現場にも足を運び、困りごとや運用上の課題を把握して技術選定や運用改善に反映する。
ICT推進グループには、これまで検証してきた建設DX関連約200の技術やサービスを整理したリストがあり、「使用中」「検討中」「今回見送り」といった現在のステータスに加え、使用した所感を含めて管理している。
ベンダー側がPRする機能も、実際に現場でテストを重ねると想定していた使用感とは違うことがある。現場の技術者/技能者が冬の寒さの中で手袋をはめたまま操作できるかといった点も重要だ。精度などの基本的な機能だけでなく、現場での操作性や再現性、サポート体制、既存システムとの連携まで含めて評価する。
導入判断で重田氏は、「ICT推進グループと現場の若手が『良い』と言わなければ採用しない」という姿勢を貫いている。「ハンディスキャナーを検討する場合、いくら精度が高くても、現場を1回りするだけで疲れるような重さでは使い続けられない。そのため、ICT推進グループの女性若手社員が実際に現場で使ってみて確かめている。長く使う上では適切なサポートが受けられるかも重要になる。導入後に運用する立場だからこそ、選定時にどこを重視すべきかのポイントが分かる」と説明する。
こうした考え方の下、土木部では現在、全現場で3D設計を展開し、日常的にドローン測量や地上型レーザースキャナー測量を活用している。現場条件や求められる精度に応じてスマートフォン連携型のRTK測位端末や、トプコンのトータルステーション「杭ナビ」を使用するなど柔軟に使い分け、現場の業務効率化に役立てている。
コストや管理の一本化よりも現場の「ストレスフリー」を最優先に
技術選定の考え方を象徴するのが、重田氏が掲げる「ベストミックス」の発想だ。
加和太建設では2D図面から3D設計/施工データを作成する工程で、建設システムの「SiTECH 3D」を採用している。一方で、ドローン測量やレーザースキャナーで取得した点群処理、出来形確認には、福井コンピュータの3D点群処理システム「TREND-POINT」を活用。工程ごとにシステムを使い分けている。
利用システムは集約した方がコストや管理の面で合理的に思える。重田氏も「社内で、システムをまとめてほしいといわれることもある」と認めつつ、「現場の技術者がいかにストレスなく使いこなせるかを重視している。現場が『使いづらい』と判断すれば、どれだけ高機能でも定着しない。各システムの長所を生かす形で併用できれば生産性が上がり、残業時間の削減にもつながる。作成した3Dデータを発注者との合意形成や地域住民への説明、高度な施工管理に役立てれば工事成績評点が加点されるメリットもある」と説明する。
DXの影響によるコスト削減効果を定量的に表すのは難しいとしつつ「3Dデータ活用が定着し、現場を可視化したことで違和感に気付けて手戻りが減れば、やり直しを防ぎ、結果的にコスト削減につながる。そのために必要なデジタル投資と考えている」と語った。
現場がストレスなく使い続けられるシステムを「ベストミックス」で組み合わせることこそが、結果として形骸化を防ぐ効果を生んでいる。
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