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万博の迎賓館や日本館を最新技術「3DGS」で解剖 日建設計が「東京建築祭2026」で公開3DGS(1/2 ページ)

日建設計の社内DX組織「DDL」は、建築イベント「東京建築祭2026」に合わせて最新3D技術「3DGS」を用いた特別展示を公開した。大阪・関西万博の「迎賓館」「日本館」に加え、普段は非公開の日建設計の共創の場「PYNT東京」を高精細に3D化したデータを2D図面と連携させて、3次元断面で直感的に体験できる画期的なアプローチとなっている。

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 日建設計は、東京都内各所に点在している名建築を特別公開するイベント「東京建築祭2026」(会期:2026年5月17〜25日)の一環として、東京都千代田区飯田橋の日建設計 東京ビル1階で特別な展示を公開した。これまでに設計を手掛けた大阪・関西万博の「迎賓館」と「日本館」、そして日建設計の共創の場「PYNT(ピント)東京」を新たな表現で体験できる内容だ。

 展示を企画したのは、社内のDX推進組織「デジタルデザインラボ(Digital Design Lab:DDL)」だ。DDL デザイングループの戸田勇登氏に、DDLが取り組む建築設計DXの考え方と本展示の狙いを聞いた。

日建設計 東京ビル1階の展示場
日建設計 東京ビル1階の展示場

「BIMは結局2D画面で理解しにくい」という課題からの出発

 DDLでは2026年の目標として、長期にわたる設計期間の中で発注者や施主に「建築の姿を体験してもらうこと」を目指し、従来の設計の範ちゅうを超えた取り組みを進めている。日建設計は例年の東京建築祭ではアナログの2D図面を多数出品していたが、今回はデジタル技術を図面と掛け合わせ、3次元の建築物の姿をそのまま残す手法を模索した。

DDL デザイングループ 戸田勇登氏
DDL デザイングループ 戸田勇登氏 写真は全て筆者撮影

 戸田氏は、「最近の建築業界では設計・施工段階で属性情報を付与した3次元のBIMが普及してきている。だが、設計者も確認の際はPCのフラットな画面に投影するため、結局は2次元に落とし込まれてしまう。BIMモデルを閲覧するにも専用ソフトウェアが必要で、3Dモデルがあってもクライアントを含む一般の人が、建築の情報を知れる環境が今はない」と、出発点になった課題を話す。

 そこでPYNT東京が2023年3月にオープンした際、DDLのメンバーが運営する「XR STUDIO」を開設。壁と天井の3面に実寸大のBIMモデルをプロジェクターで投影し、人がその場に座ったり、ARでさらに重ねてみたりと、VRゴーグルではできなかった「身をもって“体験”できる空間」となっている。「BIMモデルを3面に投影することで、平面と断面が同時に見え、誰にでも視覚的に理解しやすい」と戸田氏は語る。

点群やフォトグラメトリの限界を超える新技術「3DGS」

 だが、その先にも課題があった。戸田氏は「3次元の実物の姿そのものを残す手法がなかった。万博のパビリオンも当時は3Dモデルを作っていないため、後世に『どういう建築だったか』を伝えるものが写真しかない。設計者にとっては、既存の建築物をいろいろ見て回った上で改良に改良を重ねて今の建築を設計するので、失われた建築でさえも重要な設計のリファレンス(参考物件)となる」と語る。

 万博の場合は期間限定の公開であり、既に解体してしまっているため、見に行くことができない。PYNT東京もオフィスとして稼働しているため、一般には公開されていない。

 行きたいけれど行けない建築物を残す手法としては、フォトグラメトリや点群が挙げられる。しかし、フォトグラメトリは細部が崩れてしまい、点群は点の集合体でかたちの外側だけは表示できるものの、空間の様相をきれいに残すことは難しかった。

 そこで今回の展示では、2023年に登場した点群計測とは異なる新しい3D技術「3DGS(3D Gaussian Splatting)」を活用した。3DGSは単なる点ではなく、位置や色、透明度、形状などのパラメーターを持つ楕円(だえん)形状の分布で表現する。そのため、質感や光の反射をリアルに再現できる利点がある。

日本館の上から見た断面
日本館の上から見た断面
東京ビルの断面。天井のスケルトン構造も一目で分かる
東京ビルの断面。天井のスケルトン構造も一目で分かる

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